フダンヅカイ
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第1回 「りくカフェ」ってなんですか?

加茂 今日はお集まりいただきありがとうございます。
それでは乾杯!
一同 乾杯!
加茂 今日は仕事終わった後のアフタートークみたいな感じで
いこうかなと思っています。

お三方の仕事は似通ったところがあると思うんですよ。
この前、「シェアの未来」というイベントで
成瀬さんと猪熊さんがモデレーターで
中村さんがゲストで出演されていたと思うんですけど、
その関係だとやはり話せないことがあったんじゃないかなと。

それで、この前中村さんとフダンヅカイを収録した時に
(お二方と)話してみたいということだったので、
「セッティングしましょう」ってことになり、
そうしたら快諾して頂いたという流れです。
中村 本当にありがとうございます。
成瀬 もちろんですよ。光栄です。
加茂 まさか僕の企画に参加していただけるとは思ってもいなくて。
成瀬 なんでですかー。
加茂 接点がそんなにたくさんあるわけではなかったので。
成瀬 最初何でしたっけ。
思い出した!DESIGNTIDE TOKYOでお会いして、
お話をして、盛り上がって、
事務所に来ていただいたんですよね。
加茂 事務所近くのタイ料理屋さんで、
猪熊さんを含めてご飯食べましたよね。
成瀬 そうでしたね。
でもその後も何回かお会いしていませんか。
THE SCAPE(R)でもお会いしていませんでしたか。
加茂 そうですね。
あの時は招待状をいただいたんですけど、
自分は建築畑の人間じゃないので、
「建築関係じゃなくても大丈夫かな」と
心配しながら行ってみたら、案の定受付で
「誰だこいつ」みたいな感じになって(笑)。
一同 (笑)
加茂 そんな感じで、今日は
THE TERMINALで開催されているシンポジウム
「シェアの未来」の場外乱闘編ということで。
そんな名前つけていいのかわからないですが(笑)。
猪熊 なんかその、企画が派生する感じ、いいですよね。
加茂 「シェア」というテーマを元にして
お三方がどう考えているのか。
お互いが聞きたいことを含めて、脱線したら
そのまま行くという感じなんですけど。
猪熊 何も仕込んで来なかったんですけど。
加茂 笑いとかは大丈夫ですよ(笑)。
お互いに今までつくった建築物とかって、
今はソーシャルメディアとかで見やすくなっていますが、
ソーシャルメディアで拡散されただけでは
わからない部分もあると思います。
お互い、建築家目線で「自分たちが作ったものってどうなの」って
お互いに楽しめたらいいなと。

では、最初に猪熊さんと成瀬さんがつくったものに対して、
中村さんからご意見をいただいていこうと。
イベントでは(猪熊さんと成瀬さんが)司会だったので、
今回は中村さんが司会のような形で。
中村 僕が司会で。
猪熊 どれがいいかな。
図面もあったほうがいいという話だったので。
新しいやつか、写真がいっぱいのものがよければ、
この(iPad)中に入っているんですけど。
何がいいですかね。
加茂 自信があるものからで(笑)。
中村 最近、りくカフェが気になっているんです。
どういうきっかけで始めて、
どういう関わり方をされているんだろうと。
成瀬 本当に、たくさんの偶然が重なって
始まったプロジェクトなんです。

みんなが何かしたいけど、
どうしていいかわからないという状況の中で、
私たちも、被災地に行って
がれきの撤去を手伝う以外にできることはないのか、
と思って企画書を書いていたんです。
成瀬 その企画書というのは、
みんなが集まる場所をつくって、そこで働く人の雇用を生み出す。
というものでした。

建設費とスタートアップの運営費は企業が協賛する。
企業は目に見える形で支援ができる、
できた建物自体が広告となる、というメリットがある、
という仕組みを考えていました。
でもそれを誰に見せたらいいのかわからずにいました。
去年の4月頃だったと思います。

その時にちょうど、大学の関係で
東北の方に被害状況の調査に行っていたのですが、
たまたままちづくりを専門とされている先生と一緒になりました。
東大の都市工学専攻の小泉先生という方ですが、
「知り合いが陸前高田でコミュニティ・カフェを
やりたいと言ってるんだけど、設計してくれる人がいなくて。
成瀬さんやってくれる?設計料はないんだけど」
みたいな話をされました。それがきっかけですね(笑)。
中村 潔いですね(笑)。
成瀬 「先生、もしかして設計料だけじゃなくて、
建設費もないですよね?」って聞いたら、
「ないよ。」って。
一同 (笑)
成瀬 でも「できると思うんだ」と言われました。
なぜかといったら、土地があるからなんです。

陸前高田で被災したお医者さんが、
海辺の方に家も病院もあったので全部流されてしまったのですが、
たまたま高台にも土地をお持ちで、
昨年の4月末には仮設のプレハブで
病院や歯医者さん、薬局を再開していたんですよ。
友達の歯医者さんや薬局の方と協力して。

その歯医者さんご夫妻が、
もともと小泉先生の知り合いだったのですが、
小泉先生は被災地調査にずっと通っている中で、
「そういえば、陸前高田に知り合いがいたな。どうしてるかな」
と思って訪ねて行ったら、みなさん元気で、
行政からお金が出ないうちに、
プレハブを自立建設して(病院などを)やっていた。
更に歯医者さんの自宅には全国から知り合いづてに
沢山の支援物資が集まってきていて、
地域の拠点のようになっていた。
という民間ベースの活動に非常に感銘を受けたそうです。
成瀬 本当はみんなで集まる場所がほしいけれど、
歯医者さんの自宅では限界がある。
小泉先生どうしたらよいでしょうか?と。
そこから盛り上がって、
「病院や歯科医院の建っている敷地で、
コミュニティカフェをやろう」と。
地域のみなさんからの願いで始まったんですね。
その後、小泉先生にお声がけいただいて、
「私も実はこういう企画書を持っていて、
同じようなことを考えていました、是非やりましょう」と。
でも「お金どうしましょう?」という話ですよね(笑)。

そこからは、いろいろな企業の方に
お話しさせていただきましたが、
その中で住友林業さんが中心となって
様々な企業からご支援していただけることになり、
昨年の年末に建設して、1月から営業を開始しました。
世田谷でNPOを立ち上げて
コミュニティカフェを運営している方が
運営のアドバイザーについてくれたり、
地元出身のイラストレーターの方が
ロゴをデザインしてくれたり。
いろんな人が途中途中で協力してくれて、
今があるという感じです。
猪熊 ですね。経緯はそういう感じです。
中村 建材メーカーも、技術や物資のクラウドファンディングのような
感じじゃないですけど「提供してあげるよ」みたいな。
見返りは彼らの広告宣伝というか。
成瀬 「建物の中に、どんな建材を使ったか」
というパンフレットが置いてあるんですよ。
断熱性能の高いサッシや断熱材などが特に好評で、
その周りに建っている病院や歯科医院は、
今は本設の建物に建て変わっているのですが、
そこで実際に使われているんです。
中村 なるほど、素晴らしい。
成瀬 そういう感じで、
うまいことパズルが噛みあって今に至っています。

(つづきます)

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