中村 | 改めてホームページを拝見させて頂きましたが、 ハウスビジョンもそうですし、 PDJ-Labにも参加されておられますよね。 ポップな展覧会によく出られるな、という印象があります。 いわゆる建築家って、もっとハイカルチャーに 留まりたい人が多いじゃないですか。 ポップカルチャーに落ちてこない人が多い中で、 積極的にそういうところに アプローチされているんじゃないかなと思っていて、 そこらへんもぜひ聞きたいなと思いまして。 僕が学生の頃に、代官山の作品 (編集部注:ひとへやの森―インタラクティブな風景展)で 受賞されたじゃないですか。 僕は展示会のオープニングには行けなかったんですけど、 友達が行っていて、成瀬さんが涙していたという話を聞いて。 |
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猪熊 | 泣いてたー! |
中村 | すごい熱い方なんだろうな、と。 藤村龍至さんが僕の先輩なので、 確かビルディングK (編集部注:藤村氏の設計した複合ビル)で 猪熊さんには一度お会いしたことあったんですよ。 |
成瀬 | 当時学生だったの? 中村さんやばいね。 |
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猪熊 | だってまだ20代でしょ。 |
中村 | 今年28です。 |
成瀬 | 若い~! ほんとすごいですね。 |
猪熊 | 本当にすごいと思う! |
中村 | いやいや、そんな感じなんですよ。 僕は、成瀬さんが受賞されていて泣いていたというのは 学生時代の頃の話で。 |
成瀬 | 受賞して泣いたわけではないんですよ(笑)。 受賞はもっと前で、2006年なんです。 プロジェクトの実現までに、本当に「紆余曲折」があって、 やっとできた、やっと終わったー、次にいける、と。 |
猪熊 | 疲れたね。 |
中村 | デトックスしたわけですね。なるほどなるほど。 |
成瀬 | 今ならもっと上手に進められそうだなと思いますけど、 当時は下手くそでした。 |
中村 | それは2008年ですか。4年前ですよね。 僕がメインで聞きたかったのは、お二人は「ポップ建築家」の パイオニアかなと勝手に思っていまして。 |
猪熊 | なるほど、自分たちがポップだというイメージはなかったかも。 でも、ないところが本当にポップなのかもしれない(笑)。 本人のメンタリティはポップじゃないってことだよね。 「今回はポップにいくか」っていう感じじゃないですもん。 |
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中村 | 建築系のイベントって、 建築学生しか来ないなぁと学生ながら思っていたんです。 |
成瀬 | そういうところ、あるかもですね。 |
中村 | アカデミックな文脈ではいいとは思うんですよ。 一方で、この間の「シェア」の一連のイベントだと、 僕が参加させていただいた会は たまたま不動産建築系の人が多かったと思うんですけど、 安藤美冬さんの回とかは全然違うんだろうなと思って。 |
猪熊 | 何系が多かったんだろうね、 建築の人はあまりいなかった。 |
成瀬 | 社会人が多かったね。でも建築系ではなかった。 |
中村 | そこが可能性を感じる部分というか、 「そうですよね!」って共感する感じなんですよ。 たぶん、建築家や建築系の学生だけを対象にしていても、 少し限定的じゃないですか。 射程を自分で狭めちゃっているというか。 広い射程で戦うためには、 ソーシャルデザインをしていくためには、 色んな人に対して物言いをしていかなくちゃいけないかなと。 そこらへんのお二人のスタンスは まさに僕のロールモデルの1つなんです。 |
成瀬 | そんなことを言われると、恐縮です。 |
中村 | いやいや、とんでもないですよ(笑) 僕は塚本研(東京工業大学塚本由晴研究室)から デベロッパーに就職する時に、 建築家という肩書きでは活動しないなと思ったんですよね。 一旦、僕の中でポジティブに諦めたんですけど。 いまツクルバをやっていて、 「建築家」ってメディアに書かれそうになると 「いやいや、やめてくださいと」言ってたんですけど、 そうじゃなくていいかなと思ってきました。 お二人は、あくまで建築家というルートに乗りながらも ポップカルチャーとも接続しようとしていて、 僕はそこに共感しているんです。 なので、そのへんをぜひお聞きしたいなと。 |
猪熊 | でも建築家っていう、肩書きを保ったままっていうのは 結構意識的だよね。そうでもない? |
成瀬 | (少し沈黙)。 |
猪熊 | あれ?そうでもない?(笑) |
一同 | (笑) |
成瀬 | やりたいことをやっていたらこうなった、という……。 |
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猪熊 | そうとも言えるんですけど、 でも建築学科の学生って、学科としては 全国にいっぱいいるじゃないですか。 高専系の学生を含めて、かなりの人達がいる。 そういう意味では、 「自分が出たところは、これだけ幅広く 色々なことをやれる人材が育つんですよ」 という教育者目線というか、 そういうところを保ちたいなっていうのはあって。 建築家の枠が広がっていくほうが面白いな、 と思っているところがあるかも知れないですね。 |
成瀬 | 学生さんは、「卒業してどういう仕事をすればいいですか」とか、 スーパースターの藤本さん(藤本壮介さん)とか、 石上さん(石上純也さん)とかになれるのかな、 なるべきなのかな、そういうことを薄々みんな感じています。 そういう方向のスーパースターも 10年に1人くらいいた方がいいけど、 学校では「みんなが社会を変えていける可能性がある」 ということをよく言っているので、 自分たちでもやらねばと(笑)。 |
中村 | なるほど。 |
成瀬 | みんなの新しい目標になりたい、 っていう気持ちはすごくあります。 建築を勉強した人が何かやれるのか、 新しい建築家像ってつくれないのかな? っていうことはいつも考えています。 |
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中村 | それは、お2人がまさに教育者目線というのをお持ちだから、 というのはあるんでしょうね。 |
猪熊 | それはすごくあると思います。 建築にいてよかった、っていう気持ちはすごくあるので、 出たところに対する恩返しはしたい。 あるよね、建築愛ってあるよね? |
中村 | ありますよ、ちょっとねじれてますけど。 |
成瀬 | いや、ねじれてないでしょ。 |
中村 | ねじれてますよ、たぶん(笑)。 |
猪熊 | それはきっと塚本研がすごくコアだったからだよ。 |
中村 | はは、それは間違いないですね(笑)。 |
猪熊 | 僕らのほうは、たぶん適当なところにいたので。 「勝手にやれば」、みたいな。 |
成瀬 | むしろ、(中村さんは)東大から出そうな感じ。 塚本研からあまり出なさそうじゃないですか、異端児って。 |
中村 | そうなんですかね、異端児ですか(笑)。 |
成瀬 | 東大なら結構ウェルカムな感じですよ。 |
中村 | ただ東大の方も早稲田の方とかも、 自分でやっちゃう系の人多いじゃないですか。 馬場さん(馬場正尊さん)から始まり。 |
成瀬 | パイオニアですね。 |
中村 | 若手でも、東東京のほうで、 一棟まるまるセルフリノベーションやったりとかしている 友人がいますけど、そういうのってだいたい 出身聞くと早稲田だったりするんですよね。 校風って出るなあ、と思っていて。 そういえば、東大って、 卒業論文とかを学会発表しないですよね。 |
猪熊 | しない人結構いるかも。 (つづきます!) |
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