フダンヅカイ
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第3回 みんなの新しい目標になりたい

中村 改めてホームページを拝見させて頂きましたが、
ハウスビジョンもそうですし、
PDJ-Labにも参加されておられますよね。
ポップな展覧会によく出られるな、という印象があります。

いわゆる建築家って、もっとハイカルチャーに
留まりたい人が多いじゃないですか。
ポップカルチャーに落ちてこない人が多い中で、
積極的にそういうところに
アプローチされているんじゃないかなと思っていて、
そこらへんもぜひ聞きたいなと思いまして。

僕が学生の頃に、代官山の作品
(編集部注:ひとへやの森―インタラクティブな風景展)で
受賞されたじゃないですか。
僕は展示会のオープニングには行けなかったんですけど、
友達が行っていて、成瀬さんが涙していたという話を聞いて。
猪熊 泣いてたー!
中村 すごい熱い方なんだろうな、と。
藤村龍至さんが僕の先輩なので、
確かビルディングK
(編集部注:藤村氏の設計した複合ビル)で
猪熊さんには一度お会いしたことあったんですよ。
成瀬 当時学生だったの? 中村さんやばいね。
猪熊 だってまだ20代でしょ。
中村 今年28です。
成瀬 若い~! ほんとすごいですね。
猪熊 本当にすごいと思う!
中村 いやいや、そんな感じなんですよ。
僕は、成瀬さんが受賞されていて泣いていたというのは
学生時代の頃の話で。
成瀬 受賞して泣いたわけではないんですよ(笑)。
受賞はもっと前で、2006年なんです。
プロジェクトの実現までに、本当に「紆余曲折」があって、
やっとできた、やっと終わったー、次にいける、と。
猪熊 疲れたね。
中村 デトックスしたわけですね。なるほどなるほど。
成瀬 今ならもっと上手に進められそうだなと思いますけど、
当時は下手くそでした。
中村 それは2008年ですか。4年前ですよね。
僕がメインで聞きたかったのは、お二人は「ポップ建築家」の
パイオニアかなと勝手に思っていまして。
猪熊 なるほど、自分たちがポップだというイメージはなかったかも。
でも、ないところが本当にポップなのかもしれない(笑)。
本人のメンタリティはポップじゃないってことだよね。
「今回はポップにいくか」っていう感じじゃないですもん。
中村 建築系のイベントって、
建築学生しか来ないなぁと学生ながら思っていたんです。
成瀬 そういうところ、あるかもですね。
中村 アカデミックな文脈ではいいとは思うんですよ。
一方で、この間の「シェア」の一連のイベントだと、
僕が参加させていただいた会は
たまたま不動産建築系の人が多かったと思うんですけど、
安藤美冬さんの回とかは全然違うんだろうなと思って。
猪熊 何系が多かったんだろうね、
建築の人はあまりいなかった。
成瀬 社会人が多かったね。でも建築系ではなかった。
中村 そこが可能性を感じる部分というか、
「そうですよね!」って共感する感じなんですよ。

たぶん、建築家や建築系の学生だけを対象にしていても、
少し限定的じゃないですか。
射程を自分で狭めちゃっているというか。
広い射程で戦うためには、
ソーシャルデザインをしていくためには、
色んな人に対して物言いをしていかなくちゃいけないかなと。
そこらへんのお二人のスタンスは
まさに僕のロールモデルの1つなんです。
成瀬 そんなことを言われると、恐縮です。
中村 いやいや、とんでもないですよ(笑)
僕は塚本研(東京工業大学塚本由晴研究室)から
デベロッパーに就職する時に、
建築家という肩書きでは活動しないなと思ったんですよね。
一旦、僕の中でポジティブに諦めたんですけど。

いまツクルバをやっていて、
「建築家」ってメディアに書かれそうになると
「いやいや、やめてくださいと」言ってたんですけど、
そうじゃなくていいかなと思ってきました。
お二人は、あくまで建築家というルートに乗りながらも
ポップカルチャーとも接続しようとしていて、
僕はそこに共感しているんです。
なので、そのへんをぜひお聞きしたいなと。
猪熊 でも建築家っていう、肩書きを保ったままっていうのは
結構意識的だよね。そうでもない?
成瀬 (少し沈黙)。
猪熊 あれ?そうでもない?(笑)
一同 (笑)
成瀬 やりたいことをやっていたらこうなった、という……。
猪熊 そうとも言えるんですけど、
でも建築学科の学生って、学科としては
全国にいっぱいいるじゃないですか。
高専系の学生を含めて、かなりの人達がいる。

そういう意味では、
「自分が出たところは、これだけ幅広く
色々なことをやれる人材が育つんですよ」
という教育者目線というか、
そういうところを保ちたいなっていうのはあって。
建築家の枠が広がっていくほうが面白いな、
と思っているところがあるかも知れないですね。
成瀬 学生さんは、「卒業してどういう仕事をすればいいですか」とか、
スーパースターの藤本さん(藤本壮介さん)とか、
石上さん(石上純也さん)とかになれるのかな、
なるべきなのかな、そういうことを薄々みんな感じています。

そういう方向のスーパースターも
10年に1人くらいいた方がいいけど、
学校では「みんなが社会を変えていける可能性がある」
ということをよく言っているので、
自分たちでもやらねばと(笑)。
中村 なるほど。
成瀬 みんなの新しい目標になりたい、
っていう気持ちはすごくあります。
建築を勉強した人が何かやれるのか、
新しい建築家像ってつくれないのかな?
っていうことはいつも考えています。
中村 それは、お2人がまさに教育者目線というのをお持ちだから、
というのはあるんでしょうね。
猪熊 それはすごくあると思います。
建築にいてよかった、っていう気持ちはすごくあるので、
出たところに対する恩返しはしたい。
あるよね、建築愛ってあるよね?
中村 ありますよ、ちょっとねじれてますけど。
成瀬 いや、ねじれてないでしょ。
中村 ねじれてますよ、たぶん(笑)。
猪熊 それはきっと塚本研がすごくコアだったからだよ。
中村 はは、それは間違いないですね(笑)。
猪熊 僕らのほうは、たぶん適当なところにいたので。
「勝手にやれば」、みたいな。
成瀬 むしろ、(中村さんは)東大から出そうな感じ。
塚本研からあまり出なさそうじゃないですか、異端児って。
中村 そうなんですかね、異端児ですか(笑)。
成瀬 東大なら結構ウェルカムな感じですよ。
中村 ただ東大の方も早稲田の方とかも、
自分でやっちゃう系の人多いじゃないですか。
馬場さん(馬場正尊さん)から始まり。
成瀬 パイオニアですね。
中村 若手でも、東東京のほうで、
一棟まるまるセルフリノベーションやったりとかしている
友人がいますけど、そういうのってだいたい
出身聞くと早稲田だったりするんですよね。
校風って出るなあ、と思っていて。

そういえば、東大って、
卒業論文とかを学会発表しないですよね。
猪熊 しない人結構いるかも。

(つづきます!)

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