フダンヅカイ
豊かなノイズが生まれる場の発明をめざして ~株式会社ツクルバ中村さんと、お酒を飲みながら小一時間~

第2回 母性本能をくすぐるような場所

加茂 僕が初めてco-baを知ったのは
「CAMPFIRE」というクラウドファンディングのサイトに
掲載されていたプロジェクトを見た時だったんですが、
当時を思い出すと、プロジェクトに掲載されていた
模型がおもしろかったです。
あれを作ったのは誰だったんですか?
中村 あれを作ったのは僕の後輩なんですけど、
実はあれを作ったのも戦略的でもなんでもなくて、
建築の人って普通模型を作るじゃないですか。

自分たちもスタディ用に模型を作っていて、
CAMPFIREのネタを考えている時に、
もちろんCGとかでもいいけど、模型の方がモノとして可愛いし、
いいんじゃないってことになって、模型を使ったんですよ。
加茂 あの模型を見た時、これはおもしろそうだとわくわくして、
初めてCAMPFIREで支援をしたんです。
そしてプロジェクトが成立して、
リターンのパトロンパーティに招待されて
初めてco-baに足を踏み入れた時、
模型どおりの空間があって感動したのを覚えています。

中村さんが設計する空間の魅力ってなんだろうと
考えていたんですが、必ず人が入って完成するものを
作っているところにあるんじゃないかと思っているんです。
人がいないと「何これ?」みたいな。
今日話をしているこのco-ba libraryも、
本が入らないとただの穴が開いている空間、
下手すれば蜂の巣のような空間ですよね(笑)。
そのあたり、勇気がいる設計をするなぁと。

新しい働き方をサポートするスペースは
今あちこちにできていますけど、
人が入る前に機能として成立しているスペースが多くて、
co-baのような空間作りをしている場所は見当たらないんです。

人が入って完成するという部分については、
やはり意識されているんですか。
中村 していますね。
僕も、ヒカリエにあるコクヨのMOV(モヴ)に行った時に
「できあがっちゃっているじゃん」って思って。
パビリオンみたいなのもいくつか建っているじゃないですか。
おもちゃがいっぱい詰まっているゾーンだったり、
かっこ良くセレクトされた本棚ゾーンがあるんですけど、
教示するだけになっていた。

もっと、母性本能をくすぐるような場所の方が
僕はいいと思うんですよ。
「これでオープンしたの?」みたいな。
俺が本入れなきゃやばいんじゃないの、
みたいなことを思わせるというか。
そうじゃないとその場所に
コミットする気にもならないじゃないですか。
加茂 co-ba library、オープン時はがらんどうでしたよね(笑)。
たぶんこれだと寂しそうだからということで
本を入れてくれる人がいるんでしょう。
加茂 僕、本棚が埋まる過程を見て気づいたんですけど、
みんなが本を入れていく順番を見ると、
上じゃなくて下から本棚が埋まっていっているんですよ。
図書館として成立していくような埋め方になっていて、
co-ba会員はいい人が多いんだなと。
中村 (笑)
みんな目線のところくらいから入れてくれますからね。
加茂 目立とうとして上に入れていく人はいないじゃないですか。
そういうところもおもしろいなぁと。
母性本能くすぐるってことはそういうことでもあるのかな。

下の階のco-baも、人がいて初めていいなと思えますよね。
中村 今、co-baができた当初の、まっさらな黒板とか、
何も置かれていない机とかを見ても何も萌えないですよね。
人の痕跡がなくちゃかっこよくないな、と。
加茂 埋まっていくのが楽しいですよね。
ちなみに、最初から完成形を思い描きながら
空間を作っているんですか。
中村 いやいや、作ってないですよ。
しかも黒板に初めに一筆目を書いたのが僕で、
自分から書こうと思って書いたのではなく、
取材に来てくれたライターさんに
「何か書いてよ」って言われて、
渋々「co-ba」と書いたというのが一発目なんです。
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