高橋 | 今週ご紹介するのは、京都の伏見にある 東山酒造さんで造られている「六玄(りくげん)」です。 伏見は日本酒の三大名産地の1つですね。 (※残りの2つは兵庫の灘、広島の西条) 東山酒造は元々黄桜が少量仕込みの日本酒を造る時に 使っていた蔵元さんで、黄桜とは兄弟分みたいな感じです。 今は完全オートメーションで造る黄桜と、 手作りの味を極めることを目指す東山酒造。 この2つにはっきりと別れています。 |
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―― | 東山酒造と黄桜は、まだ交流はあるんですか。 |
高橋 | あります。 オートメーションの良い部分、手作りの良い部分を お互いに情報交換しているみたいです。 |
―― | そういうのっていいですね。 両方の良い面悪い面を理解したうえで造る 日本酒は美味しくなりそう。 |
高橋 | 今日はせっかくなので、燗をつけながら、 味の変化を知っていただければと思います。 最初は冷やで飲んでみてください。 |
―― | あ、すっきりしていて飲みやすいですね。 |
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高橋 | このお酒は山田錦が使われています。 東山酒造さんはお米にすごいこだわっていて、 全国各地の山田錦を食べ比べたり、 見たりしているそうです。 六玄は岡山県の国定さんという方が 栽培している山田錦を使っています。 |
―― | すごい、個人レベルで仕入れているんですね。 ちなみに山田錦を使って造った日本酒は どんな特徴があるんですか。 |
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高橋 | 山田錦を使った日本酒は バランスが良くて、かつ力強いのが特徴です。 なので、どの温度でも楽しめるのが魅力の1つですね。 ということで、せっかくなので今回は 燗をつけたものも飲んでいただきましょう。 今日はこの酒燗器を使います。 |
―― | おお、こんな道具があるんですね。 真ん中の瓶を取り出してお湯を注いで、 取り出した瓶に日本酒を入れて、 あとはお湯につけるだけと。 |
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高橋 | そうです。 |
―― | これだと鍋に水を張って…… といった手間が省けていいですね。 ちなみに燗をつけるときは 温度が重要になると思うんですけど、 酒燗計(日本酒用温度計)がない家庭では どうすればいいですか。 |
高橋 | 指を入れたとき、お風呂と同じ温度だと40度と 覚えておくのが良いと思います。 それよりぬるかったら30~35度、 熱いと感じたら50度みたいな感じで。 |
―― | たしかにお風呂の温度は身近なので参考になりそうですね。 |
高橋 | ただ、酒燗計があった方が良いことは間違いないです。 あ、30度になったので飲んでみてください。 |
―― | ……すごい、さっきと香りが全然違う。 あと味が濃くなりましたね。 |
高橋 | 六玄はこの温度だと舌触りがまろやかになって、 飲んだ後にほどよい辛さがきます。 燗酒に合う条件の1つとして 純米酒を使うというのがあって。 吟醸酒も燗酒にして美味しいお酒はあるんですが、 一般的には燗に合わないと言われています。 なぜかというと、 吟醸酒はアルコールが添加されているので、 熱した時にむせかえるような感じがするんです。 それは揮発したアルコールのせいで、 あの香りでお米の味がわからなくなっちゃうんです。 ……あ、すいません。 説明しているうちに45度になったので、どうぞ。 |
―― | ……おおお、 今度はすっきりして飲みやすくなった。 |
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高橋 | さっきはまろやかでしたが、 これくらいの温度になると、逆にキレが出てくるんです。 |
―― | 熱くするほどまろやかさや旨味が 強くなったりするのかなと思ったんですが、 この変化はびっくりしました。 |
高橋 | だいたい10度ごとくらいに味が変化するんです。 なので同じ日本酒でもいろいろな表情があって、 楽しみがあることを知っていただけると嬉しいです。 |
―― | 今までご紹介いただいた日本酒も 燗酒にすると全然違った楽しみ方ができそうですね。 本当に奥が深い…… 今日は燗酒にするときは基本純米酒で、 というのが勉強になりました。 |
高橋 | 必ずそうでなければいけないということではないんですが、 純米酒であればまず間違いはないです。 ちなみに、吟醸酒に添加されているアルコールが 良いものなのかどうかは、 燗酒にするとわかりやすいです。 米の旨味がしっかりと立たせられている アルコールを使っているものであれば、 燗酒にしても美味しく飲めるはずです。 |
―― | 純米酒はあくまで1つの基準ということですね。 |
高橋 | そうですね。 この辺りを理解しすぎちゃうと 「なんで吟醸酒を燗につけてるんだ!」 となっちゃうので、 皆さんにはそこまで厳密に考えずに 各温度ごとの味の違いを楽しんでいただきたいですね。 |