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第2回 いつの間にか「街の玄関」に

猪熊 住友林業さんも実物があるお陰で、
今までは住宅のみをやっていたんですけど、
「りくカフェみたいなものがほしい」という人が出てきて。
今、2棟目ができるのかな。
成瀬 東松島市というところの仮設住宅に、
診療所としてできるそうです。
仮設住宅をずっと巡回して検診していた先生が、
すごくみんなに必要とされているので
「ベースがほしいよね」ということになって。

他には、どこかで10棟くらい
「商店街として建てたい」という話もあるそうです。
意外といけるのでは、という。
猪熊 広がりつつある。
中村 今のお話を聞いていると、
この間の三浦展さんじゃないですけど、
コミュニティファーストというか。
初めにコミュニティありきで、そこから箱ができる。
まさにそういうプロジェクトだなと。

最近見学させていただいた事例だと、
長野県上田市のコワーキングスペース
Hana Lab.」さんを訪れたときにそれを強く感じました。
東北だともともとリアルにコミュニティがあるところに、
箱だけ無くなっちゃったという状態なので、
一見「コミュニティファースト」に見えているのかなぁと
今のお話を聞いて思いました。
猪熊 実際に人が集まる環境ができているので、
そこで地元の特産品などのモノを
売って欲しいという話があるんです。
外からも人がたくさん来るので、
お土産代わりにそこで買っていく、
ということも起こるらしくて。

人が集まる状態を先につくることによって、
物が売れるということに気づいて、
みんなが「置かせてくれ」と言ってくる。
順序が面白いんですよね。
最初はお金を生み出す仕組みがなかったのに、
生み出し始めたというか。
成瀬 コーヒー豆とか、マフィンとか。
運営する人たちのメインは主婦なので、
味に厳しい人たちが多いんですよ。
一度試食会に出たことがあったんですけど、
「これ、おいしくないわ」とかはっきり言います。
一同 (笑)
中村 地元のコミュニティの中で、
その人たちのセレクトは完全にハイソなんですね。
陸前高田だと、外から来た人はまずりくカフェに行って、
情報収集などをするんですか。
成瀬 そういう話はよく聞きます。
猪熊 街のリビングプロジェクトだったのに、
いつの間にか街の玄関になっている(笑)。
成瀬 りくカフェを東京から支援しているメンバーで、
たまたま今日集まって話したんですけど、
「リビングじゃなくない?」みたいな(笑)。

仮設で飲食店が再開していますが、
ゆっくりお話していると迷惑になることもありますからね。
街の人たちにとっては数ある選択肢の中の
1つにしか過ぎないんですけど、外から来た人からすると
重要なベースキャンプになっているんですよね。
Wi-Fiとか、そういうのを早く入れたいよね。
猪熊 だよね。
ちょっとだけインターネットをやる環境があればさらにいい。
成瀬 通常の利用者の割合でいうと、
外からの人が半数くらいです。
営業時間が平日の昼間なので、
地域の方は逆に来にくい面もあるのかも、と思います。
猪熊 「働いて稼がなきゃ」となっているんです。
共働きなんですよ、大体の人たちが。
そうなると平日はあまり来る暇がなくて、
おじいちゃんおばあちゃんと外の人、
みたいな組み合わせが多いんです。
成瀬 イベント時には人が集まるんですよね。特に土日。
料理教室とか、出張オムライス屋さんとか、
お雛様を作る手芸教室が毎月あったりとか。
中村 楽しそうですね。
成瀬 そうなんです。私もイベント参加してみたいです(笑)。
他には慶応大のアカペラサークルが、震災前からずっと
陸前高田に毎年1回歌いに来るというのを続けているのですが、
その子たちは今も来てくれていて、
りくカフェで月に1回コンサートをしてくれるんです。

音楽つながりでは、
先日ゴスペラーズが歌いに来てくれたんですよ。
行きたかったなぁ。
建物は声が響くと好評だったそうです(笑)
猪熊 事前に言われてもいない。
Facebookを見ていたら、
「あれ、来てたの?」みたいな(笑)。
成瀬 そういうイベントの時は人が溢れるくらい来ることもあります。
平日の昼間はお客さんの波があるようです。
猪熊 最初の頃は仕事がなかったので、人がいたんですけど。
むしろ、街が順調に回り始めたからこそというか、
皆仕事ができてきたので。

今は、リビングから玄関に役割が移っている。
だから、外部の人は増えているよね。
成瀬 インフォメーションセンターみたいな感じかな(笑)。
中村 なるほど(笑)。
ちょっと話が戻っちゃうかもしれないですけど、
建物を建てるときの協力企業さんって、
皆さんでピックアップされたんですか。
それとも、向こうから言われたんですか。
猪熊 もうひたすら探しましたね。
企画書を持って回る、というのをやっていました。
中村 窓サッシメーカーだとかは。
成瀬 住友林業さんが声をかけてくださったんです。
これは本当にラッキーでした。
猪熊 1つの住宅を作る時に、
共同でやっているダイキンさんとかタニタさんとかを
同時に巻き込んでくれたんです。

僕らが直接頑張ったのは
住友林業さんとYKK APさんを少しぐらいかな。
中村 トップを攻略する、というのはいいですよね。
成瀬 本当に運が良かったのは、
たまたまハウスビジョンっていう研究会に
参加させてもらっていたことで。
その企業の中の1つが、住友林業さんでした。

そこには、企業から勉強会に参加する
面白い人が集まっていて。
タイミングよくそういうチャンスがあったので、
ラッキーだったなと。やっぱり状況を見ると、
「形に残る支援をしたい」という気持ちがあったようです。
猪熊 喜んで下さっているよね。
建て終わったあとも、社員研修の代わりに
部署の人を10何人連れて外壁を塗りにくるみたいな。
成瀬 そう、今週の日曜日に行くらしいです。
(※収録時の話)
猪熊 住友林業の人達が。

そのイベントは僕ら関係ないんですよ(笑)。
彼らも企業として支援しているはずなんですけど、
愛情があり過ぎて通っちゃう。
もう、個人の付き合いになっているよね。
中村 いろんな人がオーナーシップを持っているというか、
「俺のやったやつだよ」みたいな。
成瀬 そうそう、そういう感じ。
中村 みんなが「俺のだ」と思うみたいな(笑)。
いいですね。そこらへんもシェアのキーワードですもんね。
猪熊 みんなにとって、自分ごとになってきた。

(つづきます)

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