フダンヅカイ
猪熊純さんのプロフィールはこちら
成瀬友梨さんのプロフィールはこちら
中村真広さんのプロフィールはこちら
もくじ
はじめに 場外乱闘編?
第1回 「りくカフェ」ってなんですか?
第2回 いつの間にか「街の玄関」に
第3回 みんなの新しい目標になりたい
第4回 「この設計である理由は、俺が運営するからだ」
第5回 渋谷をco-baっぽくしたいんです
第6回 建築自体がコワーキングだよね
第7回 「アーキテクト」のほうが正しい感じがする
第8回 リスクだってシェアしようよ

第8回 リスクだってシェアしようよ

加茂 アーキテクト宣言をしたということで
良い感じに締まってきたので、
そろそろラストにいきたいのですけど。

今日は「シェア」というテーマを通じて
皆さんをお呼びした経緯があります。
いま、シェアというテーマ色を強くした
建築物が増えてきている中で、
今後シェアという言葉を通じて、
5年10年くらいで、シェアという文脈の中で
「みんながこういうふうに過ごしてほしい」という
理想像はありますか。
猪熊 建築関係で、一番ざっくりしている話だと、
所有と利用が分離する社会が
シェアの一番の根本だと思っています。

マイホームを建てようとすると、
大金をはたいてローン地獄になって、
自分が80歳になった時のために
車椅子の通れる廊下幅にして、スーパーエコ住宅にして、って
なんでもかんでもやらざるを得ない。
みんな同じ住宅になっていくというモデルがあると思うんですけど、
シェアってそこを切り離しちゃってる状態だと思うんですよ。

ある家を複数人で使うから、好きな時に使えるし、
別な別荘もシェアで持っていて、好きな時に使える。
うまいオペレーションによって、所有と利用を切り離すと、
好きな時に好きなところで好きなように使えるものを
たくさん持っているというか、
権利だけ持っている社会になると思うんです。

少なくとも、今でも実家があって
ワンルームに住んでいるという
どっちが家だかよくわからない社会になっているわけで。
それが加速するのは自然なのかなと。
猪熊 シェアというと、直接会っている状態だけと思われがちです。
けど、共有だけしていたりレンタルの仕組みも全てシェアです。
例えば無人島の素敵な場所に3日間だけこもれるみたいな状況を、
そんなに収入がなくてもできるみたいな。
そういうことも含めて、選べる権利みたいなものが
もっと複雑にたくさん出来る社会だったらいいな、
っていうのは僕が理想としてる社会ですね。

そういう社会になると、
全ての家が同じになるのとは逆の、複数の建物の差異が
常識的になってくるモデルができると思うんです。
一部の大金持ちが豪邸を建てたり
ギャラリー付きの家を建てたり、別荘を建てたりではなくて、
社会の構造自体が切り替わってしまえば、
もっと設計も楽しくなると思うんですよね。

縮小していっているはずなのに豪邸を建てちゃって、
100人がそこを使える状態になるっていうことは
ありえる気がしていて。
設計側としても、そっちにシフトしていくと面白いのかなと。
成瀬 意外と、低コストで多様なものが
たくさん出来る社会になってしまうよね。
加茂 理想的なシェア。
中村 つくる側としては、いい環境ですよね。
猪熊 つくる側にもうまくいくストーリーを組んでいるという。
成瀬 いま全てが、リスクを避けて標準化して、
正しいものをつくりましょう、という空気、ありますよね。
すごく窮屈だから、シェアという考え方で
その窮屈さをどうにかしたいという思いがありますね。
加茂 中村さんは、
シェアというものをどういうふうに発展させて、
どういう人に受け入れられるようにしていきたいですか?
中村 締めコメントじゃないですか(笑)。

建築とか空間を外して考えると、
リスクもちゃんとシェアするってなっていけば
面白いのかなと思いますね。
シェアするメリットばかりが
フィーチャーされているんですけど、
実はリスクもシェアしてもいいんじゃないかなと
思っているんですよね。
中村 CSA(Community Supported Agriculture
=地域に支えられた農業)
という考え方があります。
元々アメリカから始まったんですけど、
自分の地域の農家の方に、
「どのくらい米が取れるかわからないけど、
とりあえず10万円渡しておくわ」みたいな形で
はじめに預けちゃうらしいんです。
仮にその時に不作だった、となってもまあいいかと。

リスクもシェアするし、
仮に豊作だったらめちゃくちゃもらえる。
豊作だからっていって捨てたりしなくて済むんですよ。
メリットもリスクもシェアする関係、
っていうのはいいなって思うんですよね。
成瀬 今の話を聞いてすごくいいなと思って。
前回の「シェアの未来」のシンポジウムの時、
ロフトワークの林千晶さん
「契約から信頼へ」っておっしゃったんですよ。
今の話とか、信頼関係がなかったら絶対できない。
中村 信頼がなかったら
「最低保障」とかありそうですもんね(笑)。
成瀬 サポートしてる農家だから、っていうのは
「信頼」以外の何物でもないなって。
中村 リスクもリターンも全てシェアするというか、
そうなってくると、
いろんなことに自分ごとができるような気がするんですよね。
初めは自分のコミュニティだったり、
自分の地元の農家さんっていう関係かもしれない。
僕が描く大上段で言うならば、
「地球をシェアしている」という感覚まで持っていけたら
もうちょっと規模がでかくなるのかなと。

エネルギー問題とか環境問題とか、
シェアの概念がないじゃないですか。
搾取する側と搾取される側の関係ですよね。
そういうところもパラダイムシフトできたらいいなと思いますね。
そのために何をやるんだって時に、
こういう場所から自分のことを地道にやる。

そういうスペースがどんどん増えていって、
その価値観が蔓延することにより、
地球全体が変わっていくといいなという感じがします。
加茂 地球全体を変えるのは、co-baから。
中村 皆さんのマイアクションから。
加茂 いいですね。

今回はすごく面白いお話が聞けました。
お互いに何か聞き足りないことがあれば何か。
中村 それは、オフレコということで(笑)。
一同 (笑)
加茂 では、今回は「アーキテクト宣言」ということでここらへんで。
ありがとうございました。
一同 ありがとうございました!
  (この後も話は続いたのですが、
 この連載ではここまで。
 最後までご覧いただきありがとうございました!)
まえへ