フダンヅカイ
猪熊純さんのプロフィールはこちら
成瀬友梨さんのプロフィールはこちら
中村真広さんのプロフィールはこちら

第6回 建築自体がコワーキングだよね

加茂 ここまでお話をお伺いしてて、
建てた後に運営まで手がけるco-baというものが
建築家から見て珍しいケースなんだということを
知ることができて、おもしろいです。
猪熊 珍しいですよね。
成瀬 考えているけど、やっていないですから。
中村 やっちゃったんです。
やってから「やべっ」って(笑)。

つくってみたものの、
「コミュニティデザインってなんだっけ」って思い始めて、
ようやく山崎さんの本を読み始めたという。
加茂 逆に、知らなかったからできることってありますよね。
中村 実は、塚本研時代にも
先輩と話していたことがあったんですけど、
建築家は工程表も書くし、
段取りとかちゃんとするじゃないですか。
なので、「建築家はカフェとかを
プロデュースできちゃうと思うんだよね」って言っていて。

その時は全然やるなんて思っていなかったんですけど、
いざ自分で池袋にカフェとかつくったりすると、
設計・施工の工程表といった建築のタイムラインに、
PRやロゴ、ツール政策や、CAMPFIREなどが加わって、
複雑になるだけでさほど意識は変わらないなって思ってきました。
ピアノの演奏をするかエレクトーンの演奏をするか、
みたいな感じで。

意外と建築のノウハウとか、脳みその使い方って
転用可能だなって思っているんですよね。
猪熊 現場中は何百人動かしているんだ、みたいな感じですからね。
中村 三浦展さんもおっしゃっていましたけど
「建築自体がコワーキングだよね」って。
猪熊 建築はそもそも祝祭的ですから。
盛り上がざるを得ない。
それを日常に持ち込むってことですよね、結局。
中村 そうですよね。

正直、塚本研のM1、M2くらいの時は悩んでいたんですよ。
建築家というものを目指したいと思う一方で、
市場規模が減っていくのも目に見えていたし。
その中で、巨匠みたいな人ってこれ以上いるのかなって
すごく考えてしまっていて。
どこかの事務所に行くか、大手にいくかって色々と考えた時に、
なかなかシンパシーを感じられるところがなかったんですね。
悶々とした時期があって。

そんな中で、「枠組みからのデザイン」を
やってみたいなって思ったきっかけが
宮下公園のプロジェクトだったんですが、
(編集部注:スケボーパークの基本設計を担当)
そういうことを言っているちょっと上の世代って、
あまりいなかったんですよね。
成瀬 私達の周りにもいなかったよね。
猪熊 でもたぶん僕らより、さらに下の世代、
中村さんくらいの世代になってくるといる気はしますよね。
中村 僕ら世代にはいるなというのは最近感じます。
中村 まさにここ(co-ba library)の施工をしてくれた
HandiHouse Projectというチームには、
武蔵工業大の手塚研究室出身で設計を学んでいた方もいます。
その彼は、卒業設計の作品で
日本一をとっているにもかかわらず設計事務所には行かず、
施工現場の経験を経て、
今や設計から施工までをやっているんです。

僕は企画、設計、運営みたいなところなんですけど、
彼らは施工者と設計者とクライアントの境界を
越えたいというモチベーションなんですよ。
だからクライアントを巻き込んで施工をするし、
設計と施工も一緒にやる。
分業化しすぎちゃってるというのは、
建築だけじゃなくていろんな産業もそうだと思うんですけど、
そこへのアクションをしているところに
シンパシーを感じたんですよね。

彼らも就職する時に
「共感できる就職先がなかった」と言っていて、
だから多分そういう中で僕らの一つ上世代の先輩方で
今一番シンパシーを感じているのは、
成瀬さんと猪熊さんなんです。
その声を、どんどん世の中にでかく発信していきたいなと。
成瀬 学生と話していると、設計を続けたい子が
大手のゼネコンとかアトリエに行きますが
中には面白い子がいて
「卒業したら、工房をやりながら設計事務所をやります」
といった子が出てきました。
デジタルツール、レーザーカッターなどを事務所に置いて、
家具とか色々なものをつくりながら、
半分自分でつくれるものはつくって
設計も受ける事務所をやるんですって。

いろいろな人が使いに来る場所になって、
コミュニケーションの拠点にもなる。
そういうことを考えてる面白い子が
出てきたなっていう感じがします。

(つづきます!)

まえへ 最新の更新へ つぎへ