フダンヅカイ
猪熊純さんのプロフィールはこちら
成瀬友梨さんのプロフィールはこちら
中村真広さんのプロフィールはこちら

第4回 「この設計である理由は、俺が運営するからだ」

加茂 そろそろ攻守交替で、
猪熊さんと成瀬さんから中村さんに聞きたいことがあれば。
中村 でも、僕聞きたいこといっぱいあるんですけど…(笑)。
一同 (笑)
加茂 尺の都合もあるので、
それは後で二次会あたりでやっていただければ……(笑)。
加茂 成瀬さん猪熊さんから見て、
中村さんはco-baという場所を作って
急に現れたというイメージなんですか。
それとも、もともと建築家として見られていた感じなんですか。
猪熊 Twitter上では独立する前にも知っていて、
何度か絡んでますよね。
中村 猪熊さんと初めてTwitter上で絡んだのは、
成瀬・猪熊建築設計事務所では、
「前提条件もデザインする」ということを
ステートメントで書いてあったと思うんですけど、
そのあたりと僕が言っている内容が近かったのか、
絡んできてくれたと思うんですよね。
猪熊 「ですよね」みたいな感じで、
僕が突然相槌を打ったんですよ。
中村 僕も「枠組みからのデザイン」ということを言っているんですが、
それは塚本先生に言われた言葉なんです。

デベロッパーに行くと言って、
「なんで行きたいんだ」と聞かれたとき、
「前提条件というか、宮下公園を作った時の前提の部分を
やりたくなってしまった」みたいなことを言ったら、
「あれだな、『枠組みからのデザイン』だな」
みたいなことを言われたのを、
そのままキャッチフレーズにしたっていう。
猪熊 言葉をもらったという。
かっこいい、さすが塚本さんもすごい。
中村 それをわあわあ言っていた時に、
猪熊さんが絡んできてくれて。
猪熊 あれ、展示の仕事をしてた頃ですよね。
中村 そうです。
僕がミュージアムデザインをやってた頃に開催されていた、
お台場の科学技術館のマテリアル展。
そのことで絡んだという感じですね。
猪熊 そうそう。
成瀬さんこの話、知らなかったでしょ。
成瀬 その頃Twitterやってないです…(笑)。
猪熊 co-baのことは、山道くん(山道拓人さん)から聞いたんです。
メルマガっぽい感じだったか、CCかBCCかで送られてきて。
Twitterか何かを見たのかな?
その後ホームページに行ってざーっと見たら、
「中村さんと一緒にやってるなあ。東工大かー」と思って。
山道くんは同級生なんですか?
中村 山道は、学年は僕の2個下ですね。
成瀬 山道くんって若いんだね(笑)。
中村 g86って言ったくらいですからね。
彼は1986年生まれです。
まだ5階だけ(co-baだけ)だったころに、
お二人に一度見学に来て頂いたんですよね。
成瀬 私も、山道くんから入ってます。
彼は元から知り合いで、
「こういうスペースをデザインしているんですよ」
って教えてもらって、
そこから中村さんのことを知りました。
中村 山道は建築設計のど真ん中を行こうとしていて、
彼はもう建築専門、特殊部隊で
ツクルバに入ってもらいたいと思っています。
彼にはco-baの運営みたいなことは全然任せないつもりで、
そこらへんは僕の役目なのかなと思っています。

物件やプログラムの企画だったり、
運営のことは僕が見取る範囲で、
企画、設計、運営に軸を通すのが僕の役目かなと。
ただ設計は結構ボリュームが大きいから、
特殊部隊として山道に加わってもらって。
「建築のことだけを考えていていい」みたいな(笑)。
成瀬 それは、とても幸せですね。
中村 でも、山道も山道で、
卒業設計で超高層をやったりしてたんですね。
二子玉川のほうで超高層をやって。
猪熊 あの、再開発が終わったほうだよね。
中村 そうです。
経済原理の中での建築、みたいなところにも
彼は興味があるって言っていました。
建築本筋をやるのは決定なんだけども、
まさに広がりの中で位置づけたいという部分があったので。
今はチリに留学中ですけどね。
成瀬 行く前に会えるかなと思ったんだけど、会えなかった。
中村 10月くらいに帰ってきますよ。半年の留学ですね。
加茂 実際に、こういった運営の仕方ってどう思いますか。
作り手から見て。
猪熊 僕らは設計畑にギリギリ留まっているんですけど、
事務所の一部を貸せたらいいな、とか
(運営に)興味はあるんですよね。
振りきってやってしまっているところは、
すごく羨ましいです。

クライアントというか仕事をくれる人は、
新しいビジネスモデルを開拓している人が多いので。
そういう人と話していると得られる知識もあるし、
「それだったらこういう設計かな」って
アイデアは広がっていくんですけど、
実際やって微細に観察したり、
成功と失敗を細かく繰り返して得られるスキルって
やっていないと出てこないものがたくさんありますよね。
このタイミングでこうだ、みたいな。

どこまで行っても自分でやらないとわからないレベルが
ありそうな感じが、近い距離にいるからこそわかる。
そういう時に、悔しくなる。
「全部わかったら、もっと設計も自由にやれただろうに」
って思うんですよ。
場合によっては自分の設計を先にやりたくて、
運営側として設計の責任を自分で負えれば
本当に強いのになって思うことがいっぱいあって。
そこをやっちゃってるっていうのは、
すごく羨ましいですね。
中村 なんか最近、自作自演系だなぁと思います。
「この設計である理由は、俺が運営するからだ」みたいな(笑)。
一同 (笑)
猪熊 すごいわかる! 
それで済んじゃうんですよね。
中村 これって、裏技過ぎないかって思うんですけどね。
猪熊 裏技なんだけど、
そっちが主流になる社会なんじゃないかなと思うんですよね。
それが羨ましい。突き抜けちゃってるところが。
成瀬 じゃあ、そうする?
猪熊 そこ悩むよね。
成瀬 悩む。いつも悩んでるかも。
猪熊 りくカフェも、NPOの理事にはなってるんですよ。
だから、運営側ではあるんです。
けど、まだ地元の人がメインだったりするので。
どこかでこう、運営側に回るのかっていう。
成瀬 でも、今日の東京メンバーの打ち合わせ内容は
ほぼ運営について、だったよね。
中村 そういうところも興味がおありなんですね。
イベントをどういうふうにやろうか、
誰を誘致してやりますか、みたいな。
まさに、シェアの一連のイベントもそうですもんね。
猪熊 学生にもよく言ってるんですけど、
建物が建つ量が減るのは目に見えていて
建築家として、生涯に建物を建てる件数も当然減っていきます。
例えば昔は300件だったのが100件になる。
でも、その分収入が減る訳にはいかないから、
残りの3分の2は自分の建てたものを運営すればいいんだ、
って学生には言ってるんですよね。
定期収入にもなるし、自分でメンテナンスすればいいし、
一番幸せでしょって。自分はやっていないくせに(笑)

どっちかっていうと中村さんモデルを話しているんですよ。
「それが、21世紀の縮小する社会での
アトリエ系建築家の楽しみ方だから」って。
ただ、1つ前の世代の藤本さんみたいな大スターが、
このロールモデルではまだ見えにくいから、
学生としてはまだ半信半疑なんだと思いますが。

だから、中村さんをガンガン売りたいですね(笑)。
早く、学生全員が2年生くらいで知る人みたいな
レベルになっていただくと、
日本はすごく幸せになるんじゃないかなと思っています。
成瀬 建築家って言ってもらったほうがいいのかな、やっぱり。
中村 つけましょうか、やっぱり。今日の対談を機に(笑)。
成瀬 そのほうがいいかもしれない。
中村 なるほど。そのほうが建築学生としては、
親近感わくかもしれないですね。
猪熊 建築業界にすごく革命を起こしている感じが。
「あれ、建築家なのに運営しているぞ?」みたいな。
成瀬 学生は、建築出身なのに設計だけじゃない
色々な仕事をしている人をあまり知らないから。
知らせたいよね、もうちょっと。

(つづきます)

まえへ 最新の更新へ つぎへ