加茂 | そろそろ攻守交替で、 猪熊さんと成瀬さんから中村さんに聞きたいことがあれば。 |
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中村 | でも、僕聞きたいこといっぱいあるんですけど…(笑)。 |
一同 | (笑) |
加茂 | 尺の都合もあるので、 それは後で二次会あたりでやっていただければ……(笑)。 |
加茂 | 成瀬さん猪熊さんから見て、 中村さんはco-baという場所を作って 急に現れたというイメージなんですか。 それとも、もともと建築家として見られていた感じなんですか。 |
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猪熊 | Twitter上では独立する前にも知っていて、 何度か絡んでますよね。 |
中村 | 猪熊さんと初めてTwitter上で絡んだのは、 成瀬・猪熊建築設計事務所では、 「前提条件もデザインする」ということを ステートメントで書いてあったと思うんですけど、 そのあたりと僕が言っている内容が近かったのか、 絡んできてくれたと思うんですよね。 |
猪熊 | 「ですよね」みたいな感じで、 僕が突然相槌を打ったんですよ。 |
中村 | 僕も「枠組みからのデザイン」ということを言っているんですが、 それは塚本先生に言われた言葉なんです。 デベロッパーに行くと言って、 「なんで行きたいんだ」と聞かれたとき、 「前提条件というか、宮下公園を作った時の前提の部分を やりたくなってしまった」みたいなことを言ったら、 「あれだな、『枠組みからのデザイン』だな」 みたいなことを言われたのを、 そのままキャッチフレーズにしたっていう。 |
猪熊 | 言葉をもらったという。 かっこいい、さすが塚本さんもすごい。 |
中村 | それをわあわあ言っていた時に、 猪熊さんが絡んできてくれて。 |
猪熊 | あれ、展示の仕事をしてた頃ですよね。 |
中村 | そうです。 僕がミュージアムデザインをやってた頃に開催されていた、 お台場の科学技術館のマテリアル展。 そのことで絡んだという感じですね。 |
猪熊 | そうそう。 成瀬さんこの話、知らなかったでしょ。 |
成瀬 | その頃Twitterやってないです…(笑)。 |
猪熊 | co-baのことは、山道くん(山道拓人さん)から聞いたんです。 メルマガっぽい感じだったか、CCかBCCかで送られてきて。 Twitterか何かを見たのかな? その後ホームページに行ってざーっと見たら、 「中村さんと一緒にやってるなあ。東工大かー」と思って。 山道くんは同級生なんですか? |
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中村 | 山道は、学年は僕の2個下ですね。 |
成瀬 | 山道くんって若いんだね(笑)。 |
中村 | g86って言ったくらいですからね。 彼は1986年生まれです。 まだ5階だけ(co-baだけ)だったころに、 お二人に一度見学に来て頂いたんですよね。 |
成瀬 | 私も、山道くんから入ってます。 彼は元から知り合いで、 「こういうスペースをデザインしているんですよ」 って教えてもらって、 そこから中村さんのことを知りました。 |
中村 | 山道は建築設計のど真ん中を行こうとしていて、 彼はもう建築専門、特殊部隊で ツクルバに入ってもらいたいと思っています。 彼にはco-baの運営みたいなことは全然任せないつもりで、 そこらへんは僕の役目なのかなと思っています。 物件やプログラムの企画だったり、 運営のことは僕が見取る範囲で、 企画、設計、運営に軸を通すのが僕の役目かなと。 ただ設計は結構ボリュームが大きいから、 特殊部隊として山道に加わってもらって。 「建築のことだけを考えていていい」みたいな(笑)。 |
成瀬 | それは、とても幸せですね。 |
中村 | でも、山道も山道で、 卒業設計で超高層をやったりしてたんですね。 二子玉川のほうで超高層をやって。 |
猪熊 | あの、再開発が終わったほうだよね。 |
中村 | そうです。 経済原理の中での建築、みたいなところにも 彼は興味があるって言っていました。 建築本筋をやるのは決定なんだけども、 まさに広がりの中で位置づけたいという部分があったので。 今はチリに留学中ですけどね。 |
成瀬 | 行く前に会えるかなと思ったんだけど、会えなかった。 |
中村 | 10月くらいに帰ってきますよ。半年の留学ですね。 |
加茂 | 実際に、こういった運営の仕方ってどう思いますか。 作り手から見て。 |
猪熊 | 僕らは設計畑にギリギリ留まっているんですけど、 事務所の一部を貸せたらいいな、とか (運営に)興味はあるんですよね。 振りきってやってしまっているところは、 すごく羨ましいです。 クライアントというか仕事をくれる人は、 新しいビジネスモデルを開拓している人が多いので。 そういう人と話していると得られる知識もあるし、 「それだったらこういう設計かな」って アイデアは広がっていくんですけど、 実際やって微細に観察したり、 成功と失敗を細かく繰り返して得られるスキルって やっていないと出てこないものがたくさんありますよね。 このタイミングでこうだ、みたいな。 どこまで行っても自分でやらないとわからないレベルが ありそうな感じが、近い距離にいるからこそわかる。 そういう時に、悔しくなる。 「全部わかったら、もっと設計も自由にやれただろうに」 って思うんですよ。 場合によっては自分の設計を先にやりたくて、 運営側として設計の責任を自分で負えれば 本当に強いのになって思うことがいっぱいあって。 そこをやっちゃってるっていうのは、 すごく羨ましいですね。 |
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中村 | なんか最近、自作自演系だなぁと思います。 「この設計である理由は、俺が運営するからだ」みたいな(笑)。 |
一同 | (笑) |
猪熊 | すごいわかる! それで済んじゃうんですよね。 |
中村 | これって、裏技過ぎないかって思うんですけどね。 |
猪熊 | 裏技なんだけど、 そっちが主流になる社会なんじゃないかなと思うんですよね。 それが羨ましい。突き抜けちゃってるところが。 |
成瀬 | じゃあ、そうする? |
猪熊 | そこ悩むよね。 |
成瀬 | 悩む。いつも悩んでるかも。 |
猪熊 | りくカフェも、NPOの理事にはなってるんですよ。 だから、運営側ではあるんです。 けど、まだ地元の人がメインだったりするので。 どこかでこう、運営側に回るのかっていう。 |
成瀬 | でも、今日の東京メンバーの打ち合わせ内容は ほぼ運営について、だったよね。 |
中村 | そういうところも興味がおありなんですね。 イベントをどういうふうにやろうか、 誰を誘致してやりますか、みたいな。 まさに、シェアの一連のイベントもそうですもんね。 |
猪熊 | 学生にもよく言ってるんですけど、 建物が建つ量が減るのは目に見えていて 建築家として、生涯に建物を建てる件数も当然減っていきます。 例えば昔は300件だったのが100件になる。 でも、その分収入が減る訳にはいかないから、 残りの3分の2は自分の建てたものを運営すればいいんだ、 って学生には言ってるんですよね。 定期収入にもなるし、自分でメンテナンスすればいいし、 一番幸せでしょって。自分はやっていないくせに(笑) どっちかっていうと中村さんモデルを話しているんですよ。 「それが、21世紀の縮小する社会での アトリエ系建築家の楽しみ方だから」って。 ただ、1つ前の世代の藤本さんみたいな大スターが、 このロールモデルではまだ見えにくいから、 学生としてはまだ半信半疑なんだと思いますが。 だから、中村さんをガンガン売りたいですね(笑)。 早く、学生全員が2年生くらいで知る人みたいな レベルになっていただくと、 日本はすごく幸せになるんじゃないかなと思っています。 |
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成瀬 | 建築家って言ってもらったほうがいいのかな、やっぱり。 |
中村 | つけましょうか、やっぱり。今日の対談を機に(笑)。 |
成瀬 | そのほうがいいかもしれない。 |
中村 | なるほど。そのほうが建築学生としては、 親近感わくかもしれないですね。 |
猪熊 | 建築業界にすごく革命を起こしている感じが。 「あれ、建築家なのに運営しているぞ?」みたいな。 |
成瀬 | 学生は、建築出身なのに設計だけじゃない 色々な仕事をしている人をあまり知らないから。 知らせたいよね、もうちょっと。 (つづきます) |