フダンヅカイ
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第4回 自分のために歌ってる?

加茂 「自分のために歌っている」と言っていた
インタビュー記事[*1]を先日読んだんですが、
あれを読んだ時「嘘なんじゃないか」と思ったんです。

というのは、全体の発言を見た時に
その考えに至るまでの経緯があったんじゃないかなと感じていて。
大事な箇所が削られている気がして、
すごくもったいないなと思ったんです。
ネル あのインタビュー記事…分かりますよ。
ネル あの記事は結構内容を端折ってたんですけど、
単純に言うと、1枚目と最新のアルバムの違いなんです。
「みんなが求めているものを歌う」か、
「自分が気持ちいいものを歌う」かの違いで。
いい曲でも伝わることも伝わらないこともあって、
そういうことを言っていたんですよ。
加茂 あの発言を嘘だというのは
きつい言い方だったかもしれないですけど、
「自分のために歌う」というのは、
自分がいいと思った曲を歌って、
みんなが楽しんでもらえればいいな、
ということだと僕は思ったんです。

もしあの記事でその大事な箇所が
飛ばされていたのであれば、かわいそうだなぁと。
ネル たしかに、みんな「いい記事だな」って読んでて、
最後は「自分のためかーい!」ってずっこけるみたいな(笑)。
加茂 あの終わり方だとただのわがままな人になっちゃうと思うんです。
自分にとっていいことであっても
みんなにとってはいいことではないことをする…
すごくまずいラーメンを作り続ける頑固親父みたいな。
ネル ははは(笑)いや、でも難しいな。
そのラーメンの例えで言うと、
人はそれぞれ違う味覚を持っているんだよね。
もしかしたら、オーナーは本当に
これが一番うまいラーメンと思っているかもしれない。
それだったら僕はいいと思うんですよね。

みんながまずいと思っても、
自分がいいと思えば作るべきだと思うんですよ。
自分に嘘をつくのが一番悪いなって思うので、
聞こえは悪いかもしれないですけど、
わがままでいいと思うんです。

ただ、そのわがままのあり方は大事で。
自分のためにはやってはいるんだけど、
ただ自分が気持ち良ければいいわけではない。
そこで反応する相手がいるから
自分が気持ちよくなる、相手も気持ちよくなる。
お互い気持ちよくさせ合いながら、
これいいなと思い合いながら…
だから、わがままであることは難しい。

あのインタビュー記事への反応を見ていると、
日本人がどうこうって言いたくないんだけど、
日本は団体行動を大事にしているから、
自分のために何かをやるというのが
許されていないところもあるのかなと感じています。
もちろん、それが悪いと言いたいわけじゃないんですけど。
加茂 自分のために、という話で続けると、
ネルさんがアップしている動画の中で、
「日本人のライブの楽しみ方が分からない」
って回がありましたよね。
なんでみんな同じ動きをするのか、
自分が楽しみたいように楽しめばいいのにって
言っていたのが印象的でした。
ネル あれは「だから日本人はダメ」とは言っていなくて、
僕はやり取りをしたくて動画をアップしているんです。

ブログをやっていた時も
「僕はこう思うんです」って感じで
話し合いにしたかったんだけど、
向こうは一方的に叩いてくるだけなので、
ブログはやめました。
加茂 そういったやり取りは難しいですよね。
ネル 悪くは言ってないんですよ。
疑問に思って、僕はこう思うんだよって。
決めつけてはいないし。
加茂 毎回、「あなたはどう思うんですか」と
話しかけていると感じるんですけど、
やっぱり日本では伝わらない人のほうが多いですか。
ネル 伝わらないですね。
2ちゃんねるとか特にそうなんだけど、
匿名だから言いたい放題じゃないですか。
匿名はいいところもいっぱいあるんですが、
あまりにも無責任な発言が多すぎると思います。
加茂 匿名での無責任な発言は問題だと思うのですが、
僕が最近感じているのは、FacebookやTwitterとか、
ソーシャルメディアのほうに目を向けてみると、
実は好意的な意見を言ってくれる人が
多いってことに気づくんです。
攻撃というか、炎上させようとしている人は
実は少ないんじゃないかなって。

ソーシャルメディア上だと
「私はこの曲についてこう思う」という意見を
誰が言っているかが分かるじゃないですか。
あれで多少はやり取りがしやすくなったのかなと思うんですが。
ネル おっしゃるとおりなんですよ。
FacebookもTwitterも、匿名じゃなくなることで
一応意見を慎重に述べるようになる。それがいいと思います。
ネル 僕が理想としているのは、
ネットの世界と現実の世界が同じようなものになること。
今、どんどんネット社会になってきているじゃないですか。
だったら、ネット社会も、現実の社会と変わらず、
発言をした人がもっと責任をもっていくべきだと。
加茂 ネルさんは全部の意見に目を通していますよね。
Twitterでは先日のインタビュー記事を発端に
若干炎上しちゃいましたけど、
そのときにちゃんと、攻撃的な人たちに対して
「気持ちは分かったから話をしよう」という姿勢で
やり取りをしていたじゃないですか。
でも、なかなかうまくいかなくて辛そうだなと感じていました。
ネル すごい頑張って、みんなの言うことを理解した上で
返事をしているつもりなんですね。
でも、「そういう意味じゃなくて、こういうつもりで言った」
と説明しようとすると、
それでもこうじゃないか、みたいな返事が返ってきて。
最後には返事が返ってこないんですよね。
なんか台無しじゃん、みたいな。
加茂 たぶんそういう人は、
誤解していた自分が恥ずかしいはずなんですよね。
僕ももちろんそんな状態になることはありますし、
直そうとは思っているのですが。
ネル いや、みんなそうですよ。
みんなそうですけど、無視は一番ダメですよね。

せっかくこんな手を伸ばそうとしているのに、逃げる、みたいな。
現実の世界だったら台無しじゃん、ダメ人間じゃないですか。

[*1]「日本の音楽が腐っていくのはもったいない」—バンド「nothing ever lasts」に学ぶ、アーティストという生き様 (ihayato.news)という記事。
http://www.ikedahayato.com/index.php/archives/12907

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