ネル	僕の大きな夢は、 日本のアーティストとして海外のフェスに出て、 でかいステージで演奏して有名になるだけでなく、 認められるアーティストになることなんです。 それと同時に、これからアーティストになりたい、 バンドマンやりたいっていう日本人の若者にも目を向けて、 海外の人でもいいね、と思えるような音楽を作ろうっていう 意識を持ってもらえるようにはしたいですね。
加茂	それをアメリカ人がやるっていうのはすごい。
ネル	余計なお世話ですよね（笑）
加茂	たしかにそうですけど（笑） それだけ日本の中でいい曲を作っている人を見ていて、 「もっともっと外に目を向ければいいのに」 と考えているのかなと思いました。
ネル	日本は日本人が気づいていない いいところがいっぱいあるからね。 いい歌、いい絵、いろんないいものが 日本にはたくさんあるんだけど、 日本の中に閉じこもっているんだよね。 だから、僕の場合は音楽だけど、 日本の音楽をもっともっと世界に認められるように、 活躍できるようにしていきたいんです。 変な使命感を感じるんですよ。 アメリカから日本に来ていろんな経験をして、 そして日本が大好き。 だからこそ、少しだけでも良い影響が 残せるんじゃないのかなっていう思いがあるんです。
加茂	使命感っていうのは良い表現だと思いました。 たぶん、使命感を感じたのも、 「感じちゃったからやる！」といった感じで 理由がないんでしょうね。

加茂	使命感という言葉を使うと、 ネルさんが「日本の人たちのここがもったいない」って 言っていることも説明しやすいのかなと。 マイナスな部分の話をしているんですけど、 その裏にはたくさんのプラスがあって、 「だからもっとここを改善しようぜ！」という感じですよね。
ネル	まあね（笑） 僕の場合は言葉遣いがまだまだだから、 もっと日本語を頑張らなきゃいけないなって 思っているんですけど。
加茂	ネルさんはプラスのことを考えているのに、 「日本の音楽業界は…」とマイナス面を話すところだけが 取り上げられてしまうので、 「日本のダメなところを言ってくれる外国人」として 呼ばれているんじゃないかなと心配した時があったんです。
ネル	でもそっちのほうがクリックするし、記事を見るからね。 そこは分からなくもないです。 僕がずっと思っていたのは、 今まで自分が取り上げられた記事もそうなんだけど、 みんな記事を見て思うこといっぱいあったんだし、 みんなTwitterとかやってるんだから僕と直接話そうよって。 僕もなるほど、もしかしたらそうかもしれないねって 納得する部分が絶対あると思うし、逆に僕も 「いや、それはこういう意味で言ってるんですよ」 と言って納得してもらえることもあると思う。 「なるほど」と思える瞬間が欲しいんだよね。 話をしていく中で「なるほど」と一度でも思えたら、 自分の世界観とか、視線が変わっていくんじゃないかなって思う。 だから話す機会をもっともっと増やそうぜって。
加茂	それはアメリカで、ディベート（議論）を たくさんしてきたからこそできることですよね。 でも、日本って議論をするという文化がほとんどない。
ネル	アメリカだけではなく、 ヨーロッパでも議論をたくさんやります。 もちろんやらない国もいっぱいあるんだろうけど、 日本だから仕方ないとか、日本だからこうだっていう 言い訳はできない時代になってきたし。 もっとみんなが人間として、 接しあう時代にしていかないといけない。 「日本人は議論をしたことがないから議論をしない」 とかなっちゃうと、いきなり壁ができちゃう。 そうなると何も変わらないです。

加茂	議論で全てを解決できるとは限らないですけど、 解決できることもあって。 ネルさんはそれを正直にやっているだけですからね。 「日本では意見を発信するだけでこんなに目立つのか！」 って思ったことはありますか。
ネル	ありますよ（笑） ありがたいことに僕の考えを いろんな記事で取り上げてもらってますけど、 コメントとか見てると みんな思っていることが一緒なのかなって。 僕はその、みんな同感だって部分にびっくりしたんです。 例えばみんなJASRACについては「組織だからしょうがない」と 考えているのかなと思っていたんだけど、 僕が「おかしくない？」って言ったら、 「すげーわかる」とか、「同感です」とかコメントがついて。 なんで俺が言わなくちゃいけないの？みたいな（笑）。 逆にみんな思ってるんだったらもっと言おうよって思います。
加茂	責任を持って発言する人に頼る人が多いですよね。 責任を持って、自信を持って発言しているから、 「この人の言うことは正しい」と簡単にフォローしてしまう。 そこが問題なのかなと。 ほんと、まず自分が意見発信をしちゃえばいいんですよね。
ネル	つまらない人生を送りたいかっていう。 前に出ようぜって。