フダンヅカイ
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第1回 思い、気持ち、空間を大事に

加茂 nothing ever lastsの曲を全部聴いて気づいたことは、
一番いいと思う曲は常に一番新しい曲なんですよ。
正直に言うと最初の頃の曲は、
一生懸命日本語で歌おうとしてて、
感情があまり乗っかっていない。

でも、新しくなるにつれてどんどん良くなってて、
現時点で最新の「My Pain, My Way」が一番いい曲でした。
この曲では、どういうふうに日本語で歌えば
自分の言葉を伝えられるのかというのを
つかんだんじゃないかなと感じたんですが。
ネル そのとおりというか、そうあってほしいです。
逆に1枚目のほうが良かったと言われたら
「くそー!」ってなっちゃうので。

1枚目のアルバムは僕も聞いてて恥ずかしいんです。
あのアルバムに収録されている曲は
僕がまだ日本に住んでいなかったころ、
日本で音楽をやりたいと思って作った曲たちなんですよ。
売れるための音楽じゃないんだけど、
みんなにいいねと思ってもらえるように作った曲ばかりなんです。

最初は理念、理想を追い求めて曲を作ろうとしていました。
でもそれだと悪くはないんだけど、感情が入らない。
やっぱり自分の伝えたい、やりたい思いじゃないと
心に響かないんです。

一番新しい「Silent Melodies(2ndミニアルバム)」や
「My Pain, My Way」は、自分が一番歌いたい、やりたい、
伝えたいメッセージとか、歌いたいメロディーとかを
一番大事にできるようになってできた曲なのかなと。
加茂 日本語がどんどん上手になっていくにつれて、
感情がうまく歌の中で出せるようになってきたんでしょうね。

1枚目を出した頃とは日本語の上達度が違うので、
この前のワンマンライブで昔の曲を今歌ったら
楽しいんじゃないかと思ったんですが。
ネル 思いましたね。

たぶんね、1枚目のアルバムの中でも、
あれをもう一回改めてやりだしたら
ぜんぜん違うことになるはずなんですよ。

ベースのYOSHIとも
「これいい曲だけど、なんかもったいないよね。
改めてライブでやったら面白いことになるんじゃない?」
みたいな話をよくします。
ワンマンライブでもずっと昔に作った曲を
取り出して演奏したんですけど、
これはこれでありだなって。
加茂 当時は心の中で「こういう曲にしたい!」
と思っていたレベルを再現できてなかったんでしょうね。
今、ライブで初期の曲を演奏すれば
理想のレベルに近づきそうな気がします。
ネル そうですよね。
ネル 今、僕の中ではいい曲を作るというよりも、
いいライブを作ることを優先するようになっているんです。

曲は、作れば作るほど良くなるし、
ギターも練習すればするほど上達する。
それは当たり前の事なので、
それを優先順位の上に持ってくると、
ちょっとおかしいかなと。
では、それより優先すべきものは何かと考えてみたら、
ライブの一瞬の楽しさだったんだよね。
加茂 その楽しさは、
特に外でライブをやった時に実現できそうですよね。
今日は暑いからこの曲歌おうとか、
元気なお客さんが多いからこの曲歌おうとか。
ネル それは応用というか、アートだと思うんです。
だって、ステージにあがるまでは
みんながどういう反応するかわからないですから。

路上ライブは特にそうなんだけど、
元々演奏する予定だった曲をお
客さんが感じている空気に合わせて変えることは
当たり前のようにあります。

お客さんをどうやって楽しませるか、
自分が楽しめるかっていうのはその瞬間でしか分からないし、
どんなにイメージトレーニングをしても分からないものです。
加茂 僕は演劇をやっていた特に
似たような経験をしたことがあります。
初めて役者として舞台に立った時に、
3回公演をやったんですけど
3回とも劇場の空気が違ったんですね。

で、僕が驚いたのは、先輩の役者さんたちが
空気に合わせて台詞の喋り方を変えたんです。
練習の時はいつも同じトーンで話していたのが、
静かな雰囲気では大きな声になったり、
笑いを取るシーンで大げさに動いたりしていました。

その役者さん達の様子を舞台上で見たことがあるので、
今ネルさんがおっしゃっていたことはすごくよくわかります。
路上ライブでもライブハウスのライブでも、
いつもお客さんは違うじゃないですか。
なので、その時その時、雰囲気に合わせて
曲を演奏することはすごく大事なことだと思います。

ネルさんは今、
「こういった空気の時はこういった曲を歌えば、
お客さんに楽しんでもらえるかな」といったことは
考えられるようになってきた感じですか。
ネル それプラス、バラエティーというか、
曲調というか、色んなスタイルで演奏ができるようになりました。

なんかもう、楽しませるというか、感動させるとか、
全部同時にはできないんですよね。
それがわかるようになってから、
自分の出せる音の幅を広げて、ジャンルも広げて、
というのができるようになりました。
加茂 今までライブをやった中で、
「もっとできたのに!」という悔しい思いが積み重なってきて
今いろんなことができるようになったんでしょうね。
それは曲にも表れているような気がしてます。

Silent Melodies」に収録されている曲を聴いた時に、
これはいいなと思ったんです。
足りなかったとしても、自分の実力を全部出しきって
伝えたいことを伝えるしかないっていうアルバムだったので。
歌詞も、曲も全部ストレートですよね。
ネル それは、ストレートに言う手段しかなかったんだよね。
思いを伝えるとか、風景を思い浮かべるとか、
細かいことが日本語でできてなかったので。
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