加茂 | サイトのコンテンツの話をすると、 「田無なおきちインディーズドラゴン祭り」 の特集が好きでした。 ああやって、あまり知られていないけど おもしろそうなイベントを拾うことは マスメディアではできないことなので。 |
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石川 | ああいう記事が書けるのは、 僕が地域紙の編集記者をやっていたからかもしれないです。 地域紙といってもいろいろあると思うんですけど、 僕がいた会社のものは新聞のような紙面内容です。 前身の媒体から数えると50年以上発行し続けていて、 西東京市、東久留米市、小平市、あとは埼玉の新座市という 武蔵野地域と呼ばれているところの一部で 毎週約15万部発行されているものでした。 それに掲載されている記事は、 大手の新聞には載っていないローカルな話題でした。 代表が「地域は国の縮図なのに、 その大事な情報を伝える媒体がない。 だから、うちらが地域の情報を伝えるんだ」 と常々言っていたのが記憶に残っています。 アートやエンタメも雑誌で紹介されている メジャーな人だけでなく、 もっとたくさんシーンを作っている人がいて。 そういう人たちを紹介するメディアって 必要だなと思ったんです。 だから東京黎明ノートの運営は地域紙をやっているのと 感覚的には似ているかもしれないです。 |
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加茂 | 地域紙だと極端な話、 人の良いおっちゃんがやってる お店とかも紹介できますよね。 そして、実際そういう人たちが街を作っているんですよ。 いまお話を聞いていて、 アートやエンタメも同じなのかなと思いました。 まだ名前は売れてないけど才能ある人たちが 色んな場所でシーンを作っている。 東京黎明ノートがその輪郭まで描けたらおもしろそうですね。 |
石川 | 「あそこに載ったら箔がつく」 と言われるくらいになりたいですね。 でも、これまでに登場した人たちも現在どんどん活躍していて。 昨年紹介した「奇妙礼太郎トラベルスイング楽団」は 今度フジロックに出ますし(※本取材は7月に行ったもの)、 ウェブ漫画の特集で紹介したONEさんは、 いま裏サンデーととなりのヤングジャンプで 計3本の連載を持つなど活躍の場を広げてきています。 東京黎明ノートで取り上げたことが原因ではなくて、 取材するタイミングが良かっただけなんですけど嬉しいです。 |
加茂 | 出世サイトみたいな位置づけですね。 |
石川 | なればいいなと思っています。 そういうイメージを作ることができれば、 うちで紹介した人が注目されるはずなので。 |
加茂 | 東京黎明ノートには覚悟を決めている人にしか 言えないことがたくさん載っていますよね。 「普段の仕事があるし」みたいなことがないのが好きです。 |
石川 | たとえばONEさんは漫画家になるぞと 仕事を辞めているんですね。 元々、ウェブ漫画や彼の作品が好きだったんですが、 その様子をTwitterで追っているうちに 熱い思いがこみ上げてきて。 あとは単純に、もっといろんな人に ONEさんやウェブ漫画のことを知ってほしかったんですけど。 それで取材をお願いしました。 不退転の覚悟でカッコイイじゃないですか。 |
加茂 | 確実に長くやり続けると思える人たちが居ると嬉しいですよね。 継続しないと作れない作品ってあるじゃないですか。 途中で悩んだり、やめたくなることがあったりしても 負けずにやり続けてできあがるものってあると思っていて。 それはやっぱり1ヶ月や2ヶ月じゃ出来ないと思うので、 そうやって自分のやりたいことを続けている人たちを 東京黎明ノートでは取り上げているなと感じていて。 いつも読んでて面白いです。 |
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石川 | ありがとうございます。 |
加茂 | ちなみに東京黎明ノートを始めて、記事を作っている間に 石川さんの周りの環境って変わりましたか。 |
石川 | たぶん、僕の周りの環境が変わったというよりは、 僕自身が変わったのかなと思います。 今までは会社員として テーマに縛りのある媒体を作っていたのが、 東京黎明ノートでは自分の意思で コンセプトそのものから作れるようになりました。 僕が編集者として、紹介する切り口さえ考えられれば 全員が取材対象になるので、 1つ1つの出会いが楽しみになりましたし、 人の話を今までより興味深く聞けるようになりました。 |
加茂 | 良い意味で「仕事」になったんでしょうね。 |
石川 | そうですね。なんでも仕事につなげられるというか、 希望を見出せるようになりました。 その分、私生活と仕事とのボーダーラインが 曖昧になった気がします。 |
加茂 | 今までの仕事をして身につけた能力は 東京黎明ノートに活かされていますか。 |
石川 | 活かされていると思います。 僕はファッション誌と新聞紙という 両極端なものを作ってきたので、 よくいえばいいとこどりができているんです。 ビジュアルで華々しく見せることも出来れば、 新聞みたいにかっちり作ることも出来ますし。 ただ、いくら見せ方がうまくても、 やっぱり一番大事なのはしっかりと取材ができる事です。 文章がどれだけあっても中身がない記事って いっぱいあるじゃないですか。 そういう意味では新聞の取材経験はかなり大きいですね。 |
加茂 | その経験を生かして、 自分で取材対象を自由に選べるようになったのが大きいと。 |
石川 | 元々会社にいる時も裁量は結構あったんですけど、 どうしても媒体の縛りっていうのがありました。 その縛りが東京黎明ノートで無くなったのは大きかったです。 自分が今まで遠く感じていたモノとかが すごい近くに感じるようになったというか、 可能性が広がりました。 東京黎明ノートではこれからブレイクするよ、 みたいな人を取り上げることと、 もうひとつの側面として 「今の当たり前って本当に当たり前なのかな?」と 疑問を持って変えようとしている人たちを 取り上げていきたいと思っています。 日本って一見、世界レベルで見ると 豊かだと思うんですけど、なんかこの状態って 本当に豊かなのかなと思うところがあって。 うちで紹介したイベントでroomsLINKっていう ファッション系のイベントがあるんですけど、 僕たち今は着るものには困らないじゃないですか。 そういう意味では豊かですよね。 でも彼らはファッションってそんなに身近なのかな ということを考えているんです。 「〇〇コレクション」みたいなイベントを開催すると 「セレブが行くんでしょ」、みたいな感じで みんな一気に引いちゃうじゃないですか。 つまり、文化としてはまだまだ成熟していないというか。 でもroomsLINKというイベントは、 将来東京全体でファッションというのを身近に、 コレクションを楽しんでもらえるようにしようと考えてるんです。 |
石川 | あとは「裏サンデー」という 無料のウェブコミックサイトを運営している人たちもそうです。 漫画家の人たちは今、連載に至るまで すごく過酷な環境にあるんですけど、 それって本当に良いのかなって考えていて。 連載作品を持てるまでのプロセスを少なくして、 自分が漫画家として生きていけるかいけないのかを 現状より早い段階で判断できる場を作りたい、 システムを作りたいという試みを理由の一つとして サイトを作ったんです。 |
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加茂 | 色々な試みがなされているんですね。 (つづきます!) |
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