フダンヅカイ

もくじ
はじめに 多くの人と触れ合う日常
第1回 「いい人、もの」を紹介するウェブマガジン
第三回 編集は特別なものではない
第三回 編集は特別なものではない
第四回 芸の道でご飯を食べられるように

第三回 編集は特別なものではない

加茂 日本は本当に豊かなのか、という話だと、
最近ずっと思っていることとして、
過去を重視する人が増えているなと感じていて。

僕は今30歳ということで
文字通り30年くらい生きてきているんですけど、
大人になるまでの間に
漫画のバブルがあり、音楽のバブルがあり、
色んな分野の黄金期を体験してきました。
で、その時を知っている人たちが
新しく漫画を描こう、音楽をやろうとしている
人たちに対して、過去の最高作品と比較して
「これはダメだ」と言っちゃう。
それが最初の一歩を踏み出しづらい状況を
作っているんじゃないかと思っているんです。

例えばおもしろい漫画を描いたとしても
「この人が以前作ったこの漫画のこのコマと比べたらダメ」
と言ってくる人がいるので、
発表することを怖がる人がいるんじゃないかなと。
ただ、そんな中で戦っている人たちもいて、
そういう人たちをどれだけ拾うのかが
大事なんじゃないかなと思うんです。
それを東京黎明ノートはできると勝手に思っていて。
石川 がんばります(笑)
加茂 実際に記事を拝見していると、
作品というよりはその人自身に
焦点を当てているなと感じるんですが、
人を中心に記事を書くことは意識されていますか。
石川 基本は人ですね。
作品にはその人となりが反映されるというか、
結局はその人が何を思ってやっているのか、
というのを大事にしたいなと思っていて。
加茂 Aを作ったBさんではなく、
Bさんが作ったAみたいな取り上げ方を
今の媒体はあまりしないのですが、
実際人から入った方が作品の良さがわかりますよね。
石川 僕自身もやっぱり
作品に感動してから入るんですけど、
作品だけで良いのであれば
マス媒体が取り上げているわけで。

作品も良くて、この人がこういう想い、覚悟で
やっているんだというのを、
応援したいと言うと偉そうですけど、
そんな気持ちで記事を書いています。
加茂 こういうのもあるんですよ、って感じですよね。
ちなみに、今後取材する予定の方はいらっしゃるんですか。
石川 いるんですが、
今は本業がいっぱい入っていて
なかなか実現しない状況ではあります。
この辺はしっかりしなきゃいけないなと
思ってはいるんですが。
加茂 石川さんは今、
編集のお仕事を中心にされていると思うんですが、
周りの編集者の方々の仕事を見るに
編集者って求められることが増えていませんか。
石川 原因はいろいろあると思うんですが、
単純に制作費が減っていて。予算の少ないものでは
編集がインタビューもしてライティングもして
って感じになってきていますね。
その辺り、本来編集者がするのとは違う仕事なはずです。
まあ、編集者といってもつくるものによって全然仕事が違うので、
僕のようなテキスト主体の制作物の場合ですね。

インタビューの場合、ライターの方が取材と執筆をして、
編集者は見ていて足りない質問があると思ったら
追加したりするという役割でした。
昔はいろいろ役割分担がされていたみたいなんですけど、
現在はそういう案件ばかりでもないですし、
今の編集は何でも屋みたいなところはある気はします。
加茂 最初、東京黎明ノートを見て
ウェブっぽくないなと思って。
理由を考えた時、ちゃんとした編集が
入っているからなんだなと思ったんです。

石川さんから見て、ウェブの媒体を見た時に
「こうしたら良いんじゃないかな」
って思う事はありますか。
石川 どういうページの作り方をしているのかなと
見ることはあるんですけど、
他のウェブ媒体のインタビューを
読むことはあまりないですね。

読むとすれば、もっぱら紙媒体です。
というのも、必要であろう情報が
ちゃんと入っていないお粗末な記事が結構目について。
自称ライターみたいな人が書いているのかな、と思います。
もちろん、探せばいい記事・メディアはあると思うんですけど、
そこまで積極的に探していないというか。

あとは、自分が請負の仕事をしていて
感じることなんですが、
広告畑の人と出版畑の人がつくるメディアでは、
やっぱり感覚が違うんだと思います。
「編集」されていないというか。

ただ、「編集」という行為は料理の付け合わせや
ファッションのコーディネートを決める時のように
だれもが日常的にしていることで、
特別なものとは決して思っていません。
プロかどうかの違いはありますが。
加茂 今は2ちゃんねるのまとめサイトとか、
1つの事実を拡大解釈して煽るといったサイトが
人気を博しているんですが、
そういう事実に対して悩んだりすることってありますか。
石川 悩みはしないですね。
人気のある・ないは結局自分の力不足だと思いますし。

ただ、先日うちの記事がまとめブログで
曲解されて掲載された時、読者の反応を見て
「なんで本文を読みもしないでそんな簡単に信じちゃうんだ」
と感じることはありました。
加茂 ああいうのを見ると、
実際に読まないで判断する人が多いってことなんでしょうね。
でも、東京黎明ノートとしてはその辺りではなく、
あくまで硬派な内容を読みたい人たちへ向けた
コンテンツを作り続けていくと。
石川 そうですね。
硬軟織り交ぜて、そういうニーズにも応えられる
サイトでありたいと思っています。

(つづきます!)
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