浦上 | ときどき、一般の方々は 「美術品は素晴らしいけど売り買いするなんて」 ということをおっしゃられるんですが、 僕は全くそう思ってなくて。 やっぱりちゃんとしたモノはちゃんとしたトコロに 行かないといけないんです。 そこには仲介する人も当然必要になります。 「素晴らしい」と褒めることは誰でもできるんです。 ただ、それを買うとなるとお金も掛かるし、 誰にとっても大変真剣な行為になります。 そうすると、100万回褒める方よりも、 「それ、私買います」と言う方のほうが、 真剣に、純粋にそれが好きなんだと思うんですね。 買うという行為を「美術品を汚している」 みたいなレベルで考える人がいるんですけど、 それは全くくだらない発想です。 真贋の保証をしっかりとして、 お客さんに安心して買っていただく 環境づくりをする人は必要なんです。 気に入って買ったのだけど、 あとから調べたら偽物だったとか、この世界は多いんですよ。 |
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浦上 | 悪いもの、単純に言うとニセモノを売る人はもちろん悪いです。 だけど、実はニセモノを買う人もある程度悪いんです。 なぜかというと、ちゃんとしたトコロで買わないから。 そういう人たちは「どこかで掘り出し物をしたい」、 「100万円のものを1万円で買いたい」と思って買うんですね。 でも、目もない人にいいものを買えるわけがないんですよ。 僕もそういう人たちが持ち込んだモノを 鑑定する時があるんですが、ほとんどがニセモノです。 「これを売れば一生遊んで暮らせると言われた」 とか言って持ってくるんですけど、 「どこでいつごろ買われましたか?」と聞いてみると、 みんなうやむやなことを言っていて、 やっぱりへんな買い方をされている場合が多いんです。 |
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加茂 | とある知らない蚤の市で買ったとか。 |
浦上 | そう。なので失礼な言い方なんですが、 見る目も養われていないのに、買った経験もないのに、 変に「これは儲かるぞ」と思い込んでしまうという。 一種の妄想ですよね。 |
加茂 | 「儲ける」という考え方をもっている人たちというのは、 「高い」とか値段の話をされますよね。 でも、純粋に欲しいものには「高い」って あまり言わないイメージがあるんです。 「安いね」と言ったら、 それは褒め言葉なのかもしれませんが。 |
浦上 | 「安いですね」と言って買う人はいませんよ(笑) しめしめと思っている方はいるかもしれないですけど(笑) |
浦上 | 値付けの話だと、村上隆さんっているでしょ。 彼が「この壺を買っていくら儲かったとかいくら損したとか、 これからはそんな話が普通に出来ても良いんじゃないですか」 と言ったんです。 その時に同席していたある美術館の館長は ちょっと眉をしかめて「そうかなぁ」と言っていましたけど、 僕はそれでも良いと思います。 もちろん金儲けで売り買いするのは味気ないと思うんだけど、 彼はそういう意味ではなく、 自分の買ったモノがどういう評価をされていくのかも しっかりと見続けないといけない、 ということを言いたかったんだと思います。 良いモノは、俗に言う我々の言葉で「出世」するんです。 少なくとも値段はある程度上がる。 もちろん我々だって商売なので利益を含めて売っていますから、 買った次の日に売ってそんなに儲かることはないと思いますよ。 でも基本的にモノが良ければ、 例えば5年、10年、場合によっては20年持てば、 間違いなく損はしません。 ただ、我々は証券会社じゃないから 「これを買っておくと儲かりますよ、良い投資になりますよ」 という売り方はしないですが。 (つづきます!) |
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