加茂 | 浦上蒼穹堂のウェブサイトで 今まで開催されたイベントの内容を見たとき、 一般の方というか、僕みたいに 美術にあまり興味がなさそうな人でも入りやすい会場で イベントを多く開催されていたのが気になったのですが、 意図的にそうされているんでしょうか。 |
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浦上 | 僕の場合、いろんな美術館で イベントをやっているので、 ウェブサイトに載せ切れていないところだと、 美術館をはじめとした 専門的なところでも開催しています。 逆に美術館じゃないスペースで イベントを開催する理由は、 もっとキャパを広げたいんです。 なぜかというと、美術館って誰もが行かないから。 入場料もそこそこ取るし、行かないんです。 ところが入場料無料となると 「なんだろう」と気楽に入ってくると。 そうすると、100人来たら、2、3人くらいは 「あれ、これ面白いかもしれない」 となる人がいるかもしれないんです。 それが1万人だったら2、300人になる。 僕はそれがとても大事なことだと思っています。 その2、3人の人たちにとっての 導入部になっただけでも開催した価値があります。 |
浦上 | ここで大事なことは、有料でも無料でも、 どんなイベントも質を落としてはダメです。 よく美術館の人とも話すんですが 「どうせわからないんだから ちょっと質が落ちたやつでもいいよね」 となると絶対失敗します。 手を抜いちゃいけないんですよ。 一般の人も楽しめて、 玄人筋も「やるな」ってなるのが良い展覧会です。 感性の良いお客さんは必ずいて、彼らは見抜きますよ。 |
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加茂 | それが美術品との出会いというか、 今まで全く知らなかったけど、 面白そうな世界への入り口だと。 |
浦上 | そうです。 |
加茂 | その入り口を浦上さんが たくさん作られているんだなというイメージを、 今まで開催されたイベントの一覧を見て感じたんです。 今回こうやっておはなしをお伺いする きっかけになった北斎漫画は、 渋谷のヒカリエで展示会をされたじゃないですか。 あれは人が多い所での開催を 狙っていたんだろうなと思ったんですが。 |
浦上 | あれはたまたまっていうこともあるんですけどね。 ヒカリエがオープンすることになった時に 向こうの方から「展示をやってもらえませんか」 とかなりの勧誘があって、なぜですかと尋ねたら、 何人かに「浦上さんにやってもらったら」と 推薦されたらしくて。 こっちもそこまで言われたら、悪い話ではないし 「じゃあやりましょうか」となったんです。 その当時ヒカリエはオープンしたばかりで とんでもないホットスポットだったので、 北斎漫画の展示はスタートしてから 1ヶ月くらい経った時期に開催したんですけど、 1週間で2万人も来られましたよ。 |
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加茂 | 2万人! |
浦上 | ヒカリエ全体は1日20万近く来ていたので 全体から見たら微々たる人数なんですが、 来場者が1日2000人を越すとちょっと怖いぐらいでしたね。 |
加茂 | 美術は万単位の人が見るという イメージがあまりないので、2万人というのは かなり驚きの数字なんじゃないかと思ったんですが。 |
浦上 | 驚きです。 ただ、僕は「アートフェア東京」という イベントにも出展していて、 あれはだいたい3日間で5万人来るんです。 なので数字だけで言うとそっちの方が 多くの人が来たことになるんですが、 今回の北斎漫画の展示は、言い方は変ですが 30坪のスペースでワンマンショーというか、 他の人と共同ではなく単独で開催したイベントでした。 そうすると、偶然来た人がほとんどだと思うけど、 「なるほど、2万ってこういう数字か」 というのが実感できて。すごかったですね。 僕らは基本、お客さんとお相手する時は1対1ですから。 |
(つづきます!) |