フダンヅカイ
浦上満さんプロフィール
もくじ
はじめに 農家とプロデューサー
第一回 日本橋は古美術商のメッカ
第二回 ニセモノは売る人も悪いが、買う人もある程度悪い
第三回 自分が持つよりふさわしい人に売る
第四回 みんな、自分の好きなモノにお金を使えていない
第五回 古美術品は「買う才能」がある
第六回 100人来たら2、3人は興味を持ってくれる
第七回 数字とは少し離れた世界
第八回 北斎漫画にまつわるあれこれ(日本編)
第九回 北斎漫画にまつわるあれこれ(海外編)
第十回 儲ける以上に大切なこと

第六回 100人来たら2、3人は興味を持ってくれる

加茂 浦上蒼穹堂のウェブサイト
今まで開催されたイベントの内容を見たとき、
一般の方というか、僕みたいに
美術にあまり興味がなさそうな人でも入りやすい会場で
イベントを多く開催されていたのが気になったのですが、
意図的にそうされているんでしょうか。
浦上 僕の場合、いろんな美術館で
イベントをやっているので、
ウェブサイトに載せ切れていないところだと、
美術館をはじめとした
専門的なところでも開催しています。

逆に美術館じゃないスペースで
イベントを開催する理由は、
もっとキャパを広げたいんです。
なぜかというと、美術館って誰もが行かないから。
入場料もそこそこ取るし、行かないんです。
ところが入場料無料となると
「なんだろう」と気楽に入ってくると。

そうすると、100人来たら、2、3人くらいは
「あれ、これ面白いかもしれない」
となる人がいるかもしれないんです。
それが1万人だったら2、300人になる。
僕はそれがとても大事なことだと思っています。
その2、3人の人たちにとっての
導入部になっただけでも開催した価値があります。
浦上 ここで大事なことは、有料でも無料でも、
どんなイベントも質を落としてはダメです。
よく美術館の人とも話すんですが
「どうせわからないんだから
ちょっと質が落ちたやつでもいいよね」
となると絶対失敗します。
手を抜いちゃいけないんですよ。
一般の人も楽しめて、
玄人筋も「やるな」ってなるのが良い展覧会です。
感性の良いお客さんは必ずいて、彼らは見抜きますよ。
加茂 それが美術品との出会いというか、
今まで全く知らなかったけど、
面白そうな世界への入り口だと。
浦上 そうです。
加茂 その入り口を浦上さんが
たくさん作られているんだなというイメージを、
今まで開催されたイベントの一覧を見て感じたんです。
今回こうやっておはなしをお伺いする
きっかけになった北斎漫画は、
渋谷のヒカリエで展示会をされたじゃないですか。
あれは人が多い所での開催を
狙っていたんだろうなと思ったんですが。
浦上 あれはたまたまっていうこともあるんですけどね。
ヒカリエがオープンすることになった時に
向こうの方から「展示をやってもらえませんか」
とかなりの勧誘があって、なぜですかと尋ねたら、
何人かに「浦上さんにやってもらったら」と
推薦されたらしくて。
こっちもそこまで言われたら、悪い話ではないし
「じゃあやりましょうか」となったんです。

その当時ヒカリエはオープンしたばかりで
とんでもないホットスポットだったので、
北斎漫画の展示はスタートしてから
1ヶ月くらい経った時期に開催したんですけど、
1週間で2万人も来られましたよ。
加茂 2万人!
浦上 ヒカリエ全体は1日20万近く来ていたので
全体から見たら微々たる人数なんですが、
来場者が1日2000人を越すとちょっと怖いぐらいでしたね。
加茂 美術は万単位の人が見るという
イメージがあまりないので、2万人というのは
かなり驚きの数字なんじゃないかと思ったんですが。
浦上 驚きです。
ただ、僕は「アートフェア東京」という
イベントにも出展していて、
あれはだいたい3日間で5万人来るんです。
なので数字だけで言うとそっちの方が
多くの人が来たことになるんですが、
今回の北斎漫画の展示は、言い方は変ですが
30坪のスペースでワンマンショーというか、
他の人と共同ではなく単独で開催したイベントでした。

そうすると、偶然来た人がほとんどだと思うけど、
「なるほど、2万ってこういう数字か」
というのが実感できて。すごかったですね。
僕らは基本、お客さんとお相手する時は1対1ですから。
(つづきます!)
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