加茂 | 最後に、今後林さんが 自分の仕事を通じて実現したいことって、 いま頭の中にあるものでどんなものがありますか。 |
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林 | 今、インドとかインドネシアに興味があって。 私がやってみたいなと思っているのは、 例えばインターネットをするための通信の部品、 あるいはコンピュータを作るための素材があるとして。 それをいかに安く作って、 発展途上国に売るかというのは今までの考え方と一緒。 そうじゃなくて、 部品を作るノウハウは先進国にあって。 実際に作るのは発展途上国。 先進国の人間と一緒に作っていくことで、 先進国で生まれた技術が いかに発展途上国の文化的なレベルを 高められるかというものをやってみたい。 ルール、ノウハウは先進国、 でもその、単価であったりビジネスのあり方は 発展途上国の人たちと一緒になりながら、 どうそれを作っていくかというあり方。 そうすると完成品を持っていくんじゃなくて、 部品だけでいいんですよ。 で、その部品をネットワークしている いろんな面白いグループがあって、 そういう人たちと一緒に完成品を作っていくという プロセスを見ながら、先進国にいる私たちが学ぶの。 |
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加茂 | 学ぶ、なんですね。 |
林 | そう。 「何のためにこの技術が必要だったのか」 ということを改めて教わるの。 それは発展途上国のためだけのものではなくて、 お互いのお金ではない価値の等価交換だと思っていて。 そこが等価であればあるほど、サスティナブルで 広がりが出るものだと私は思っているわけ。 そういう仕組みを メディアラボの最新のテクノロジーを使ってやってみたい。 それは発展途上国のためでもなく、先進国のためでもなく、 地球がサスティナブルであるために。 |
林 | ここまで技術が進むとね、もう、 ちょっと便利になったものを作ったからといって、 生きてた意味って感じられないんだよね。 何のために私たちが働いているのって時に、 やっぱり人って「ありがとう」って感謝が 多ければ多いほどやってよかったって思うので。 例えば携帯端末作っている人って、 たぶんハッピーじゃないと思うんだよね。 画素数の違いとかスペックの差ばっかりで、 そこに作っている人間の、 いいものを作れたなっていう本気の手応えは少ないと思う。 でも、「この携帯端末についているカメラの技術があったら インドの子たちはどれだけクリエイティブになれる」 あるいは、ここでどんなことができるってことがわかったら、 自分が生み出している技術の本当の価値を もう一回体感できると思うんだよね。 手を取り合って価値を生み出すようなプロセスは、 これからもっと生まれてくるんじゃないかなって。 |
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加茂 | 似た話だと、医者の卵を発展途上国に連れていくという プロジェクトを聞いたことがあって。 簡単に言えば日本は健康な人が多いんですけど、 そのプロジェクトでは常に死にかけている人を 治療しなきゃいけないんです。 そこで、全員の眼の色が変わる。 今、林さんがおっしゃっていることは、そんな感じで、 自分たちの技術が本当の意味で役に立った瞬間というのを どれだけ作れるかってことですよね。 |
林 | あとは、最先端のメディアラボのテクノロジーと、 途上国のネットがきていない村に どうネットを持ってくるかっていう、 ここの出会いが最高にワクワクすると思っていて。 だからなんか、出会うものが違えば違うほど、 結びついた時のワクワク度は大きくなると思う。 だから多様性が大事だと思う。 |
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加茂 | 地球規模ですね。 |
林 | 地球規模の多様性をやってみたいな。 |
加茂 | それはロフトワークというか、 林さん個人の今の願いですか。 |
林 | そうか。仕事として、に落ちてなかった(笑)。 |
加茂 | いえ、全く問題ないです(笑) 今の考えは、林さん個人としての 突出した考えだったのかなと思って。 |
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林 | でも1年後には ロフトワークが目指しているようになるかも。 FabCafeも、インドネシアとか、ベトナムとか、 そういうところと繋がっていったら、 まさにそれは、新しいFabCafeの価値をもう1回感じることで。 それは教わることなの、私たちが。 |
加茂 | 教わるっていうの、いいですね。 教えて教えられてっていう。 そんなことを地球規模でやっていくと。 |
林 | 多様なものをね、 ますますくっつけていきたいなって思います。 |
加茂 | すごい楽しみです。 今日は長々とありがとうございました。 (この連載はこれでおしまいです。 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました! 良かったら、ロフトワークのサイトも 訪れてみてくださいね) |