フダンヅカイ
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もくじ
はじめに 元気のもと
第1回 量が質を生む
第2回 なんでこれをやろうと思ったの?
第3回 日本で閉じている必要がない
第4回 私がいちばん楽しんでる
第5回 クリエイティブ・コモンズ
第6回 イノベーションをどう作っていくか
第7回 早く利益を出さなきゃいけない
第8回 結びついた時のワクワク度

第8回 結びついた時のワクワク度

加茂 最後に、今後林さんが
自分の仕事を通じて実現したいことって、
いま頭の中にあるものでどんなものがありますか。
今、インドとかインドネシアに興味があって。
私がやってみたいなと思っているのは、
例えばインターネットをするための通信の部品、
あるいはコンピュータを作るための素材があるとして。
それをいかに安く作って、
発展途上国に売るかというのは今までの考え方と一緒。

そうじゃなくて、
部品を作るノウハウは先進国にあって。
実際に作るのは発展途上国。
先進国の人間と一緒に作っていくことで、
先進国で生まれた技術が
いかに発展途上国の文化的なレベルを
高められるかというものをやってみたい。

ルール、ノウハウは先進国、
でもその、単価であったりビジネスのあり方は
発展途上国の人たちと一緒になりながら、
どうそれを作っていくかというあり方。
そうすると完成品を持っていくんじゃなくて、
部品だけでいいんですよ。

で、その部品をネットワークしている
いろんな面白いグループがあって、
そういう人たちと一緒に完成品を作っていくという
プロセスを見ながら、先進国にいる私たちが学ぶの。
加茂 学ぶ、なんですね。
そう。

「何のためにこの技術が必要だったのか」
ということを改めて教わるの。
それは発展途上国のためだけのものではなくて、
お互いのお金ではない価値の等価交換だと思っていて。
そこが等価であればあるほど、サスティナブルで
広がりが出るものだと私は思っているわけ。

そういう仕組みを
メディアラボの最新のテクノロジーを使ってやってみたい。
それは発展途上国のためでもなく、先進国のためでもなく、
地球がサスティナブルであるために。
ここまで技術が進むとね、もう、
ちょっと便利になったものを作ったからといって、
生きてた意味って感じられないんだよね。
何のために私たちが働いているのって時に、
やっぱり人って「ありがとう」って感謝が
多ければ多いほどやってよかったって思うので。

例えば携帯端末作っている人って、
たぶんハッピーじゃないと思うんだよね。
画素数の違いとかスペックの差ばっかりで、
そこに作っている人間の、
いいものを作れたなっていう本気の手応えは少ないと思う。

でも、「この携帯端末についているカメラの技術があったら
インドの子たちはどれだけクリエイティブになれる」
あるいは、ここでどんなことができるってことがわかったら、
自分が生み出している技術の本当の価値を
もう一回体感できると思うんだよね。

手を取り合って価値を生み出すようなプロセスは、
これからもっと生まれてくるんじゃないかなって。
加茂 似た話だと、医者の卵を発展途上国に連れていくという
プロジェクトを聞いたことがあって。
簡単に言えば日本は健康な人が多いんですけど、
そのプロジェクトでは常に死にかけている人を
治療しなきゃいけないんです。
そこで、全員の眼の色が変わる。

今、林さんがおっしゃっていることは、そんな感じで、
自分たちの技術が本当の意味で役に立った瞬間というのを
どれだけ作れるかってことですよね。
あとは、最先端のメディアラボのテクノロジーと、
途上国のネットがきていない村に
どうネットを持ってくるかっていう、
ここの出会いが最高にワクワクすると思っていて。

だからなんか、出会うものが違えば違うほど、
結びついた時のワクワク度は大きくなると思う。
だから多様性が大事だと思う。
加茂 地球規模ですね。
地球規模の多様性をやってみたいな。
加茂 それはロフトワークというか、
林さん個人の今の願いですか。
そうか。仕事として、に落ちてなかった(笑)。
加茂 いえ、全く問題ないです(笑)
今の考えは、林さん個人としての
突出した考えだったのかなと思って。
でも1年後には
ロフトワークが目指しているようになるかも。

FabCafeも、インドネシアとか、ベトナムとか、
そういうところと繋がっていったら、
まさにそれは、新しいFabCafeの価値をもう1回感じることで。
それは教わることなの、私たちが。
加茂 教わるっていうの、いいですね。
教えて教えられてっていう。
そんなことを地球規模でやっていくと。
多様なものをね、
ますますくっつけていきたいなって思います。
加茂 すごい楽しみです。
今日は長々とありがとうございました。


(この連載はこれでおしまいです。
 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
 良かったら、ロフトワークのサイト
 訪れてみてくださいね)

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